■Performance
『U-05』はES9018を思わせる粒立ちが良くて解像度の高い音を聴かせてくれる。特にバランス接続でヘッドフォンを聴くと、その特徴が際立つ。試聴にはバランス接続にAKG『K601』をアンバランス接続にPhilips『Fidelio X1』を使用した。繊細な高域の再生が得意な『K601』をバランス接続にすると、その特徴が遺憾なく発揮され、中島 美嘉「ずっと好きだった~ALL MY COVERS~/I LOVE YOU (Album Ver.)」のボーカルがピシッとしたセンター定位で、艶っぽく聞こえてくる。バランス特有の左右の広がり空間感も表現され10万円以下のヘッドフォンアンプとは思えない実力を発揮した。
では本機の様々な機能を使うと、ほんとうの音は変化するのか? バランス出力をリファレンスのパワーアンプに接続して、スピーカーはApogee『Duetta Signature』で検証してみよう。まず、DACのデジタルフィルターを切り替えてみた。SLOWフィルターでは、粒立ちが抑えられボーカルがなめらかな感じになるが、高域は尖って、音場感はやや曖昧になってくる。SHARPフィルターでは、粒立ちが強調され解像度が上がった感じだ。高域に輝きがあり、音像定位が向上してボーカルの口元がハッキリ分かる。PIONEERが独自開発したSHORTフィルターはどうだろう。SHARPより解像度の強調感がなく、ボーカルが自然な感じになる。粒立ちはSLOWよりもあり、低音の量感も出る。私の好みはSHORTフィルターだ。ちなみにDSD音源の場合も3種類のフィルターが選べる。
次にHi-bit 32と名付けられたビット拡張を試す。CDからリッピングした音源や24bitのハイレゾ音源を32bitに変換する機能だ。実は『INVICTA/MIRUS』はこの機能を使ってデジタルボリュームの音質劣化を防いでいる。この機能による音質の変化は音源によっては、ごくわずかで主に音場感が向上する。音場が左右の広がり、見晴らしが良くなった感じでボーカルはぽっかりと浮かび上がる。私なら常時32bitで使う。アップサンプリング機能はどうだろう。OFF、LOW、HIGHと切り替えていくと音場が広くなり、高域が伸びるように感じる。DIRECTに戻すと音に厚みが戻る。では、いよいよロックレンジアジャストを使ってみよう。これはデジタル伝送のクロック帯域の許容範囲を狭くすることにより、音質を向上させる機能で、狭すぎるとロックが外れて音が出なくなるので、通常はメーカーが安全な値に設定していじれないようになっている。ノーマルで4段階、上級者向けモードで7段階が選択できる。ここまで細かく調整できるモデルは初めてだ。これは面白いほど音が変化する。ロックを狭くするとS/Nが良くなり音場が広くなる。音像定位もクッキリして解像度が上がった感じだ。4段階では1にしても音切れはなかった。7段階に切り替えて減らしていくと、1まで減らすと数秒に一度、音切れが発生する。そこから2段階戻すと音が切れなくなった。これはUSBケーブルの交換や長さ、セッテイングなどを詰めていけば、もう少し狭められるかもしれない。せっかくなので、USB以外のデジタル入力も試してみよう。これはAES/EBU接続が良かった。高域の刺さる感じが抑えられ、音の粒立ちはそのままmだ。DSD再生をしないならUSBよりAES/EBU接続がオススメだ。最後にラインのバランス出力を固定で使うと、音の透明感が上がり、ボーカルのニュアンスがさらに出るようになった。上質なプリアンプかアッテネーターがあれば『U-05』のライン出力を固定にすることで、さらなる音質向上が狙える。
デスクトップに置くにはギリギリのサイズ。特に背が高いので存在感がある。操作性を考えるとここに置くのがベストなのだが……