■圧倒的な加速力
バルセロナの市内と郊外で『カイエンS ディーゼル』を走らせてみると、エンジン以外はガソリン版の『カイエン』とまったく同じだということがわかる。がっしりしたボディーに豊富な装備が機能的に配置されたインテリア、正確なステアリング、引き締まった乗り心地と強い加速力などが『カイエン』が、初代から共通して持っている美点だ。それらは、そのまま『カイエンS ディーゼル』へも継承されている。
このクルマならではの特徴は、独特の加速フィーリングと静粛性の高さだ。ディーゼルゆえの特性と大排気量が合わさって、アクセルペダルを深く踏み込まなくても強い加速をしていく。平坦路はもちろんだが、特に顕著なのが上り坂だ。グイグイと巨体を押し上げていく感覚があった。
ガソリンエンジンの『カイエン』の場合、アクセルペダルを深く踏み込んでエンジン回転が上昇していくのと比例するようにスピードも増していったが、ディーゼルは違う。喩えてみれば、アクセルペダルは加速のための蛇口のようなもので、深く踏み込むとガソリンと同じようにエンジン出力が増大されていくのだが、回転が上昇しないうちにクルマが加速していくような感じがする。
満々と水をたたえた巨大なダムの噴出口を開け、膨大な量の水が自身の重さによって勢いよく押し出されるような感じだ。アクセルペダルの踏み込む深さは、噴出口の直径の大小のようなもので、排気量の大きさが貯水量といった感じだろうか。