■もはや、ATのほうが速く、燃費も良い
山口百恵がNHKに歌い直しを強いられる前から、ポルシェは高性能スポーツカーの代名詞だった。それは今でも変わらないけれども、ポルシェって他のクルマと較べて、いったい何が、どう違うのだろうか?
先日、最新のポルシェ4台を一度に乗る機会があって、改めてポルシェの深い実力を思い知らされた。4台とも、オートマチックトランスミッション(AT)の「PDK」(ポルシェ・ドッペルクップルング=ツインクラッチ)が装着されていた。
ポルシェのATには2種類あって、ひとつはトルコンタイプの「ティプトロニック」。もうひとつがツインクラッチタイプのPDKだ。ツインクラッチとは文字通り2組のクラッチが自動的に交互にギアを変えていくから、構造的にはMTながらもMTのようなクラッチペダルは存在せず、ペダルはアクセルとブレーキの2本だけだ。だからオートマ限定免許で乗ることができる。
ドライバーはシフトレバーを“D”ポジションに入れるだけで、あとはアクセルとブレーキを踏みハンドルを切るだけで、クルマが走行状況を判断して、勝手に7段変速してくれる。その勝手ぶりの賢さに舌を巻いてしまった。日本で一番傾斜のキツい箱根ターンパイクの連続するコーナーを、911カレラ・カブリオレのPDKはまるでセバスチャン・ベッテルがトランスミッションの中に入っているかのような巧みさでギアを変えていく。変速で難しいのはシフトアップよりも、シフトダウンだ。PDKは、これを完璧にこなすのだ。