●千里の道も“1冊”の相棒から
自他ともに手帳マニアを認める熊谷正寿さん。21歳の時に使い始めた手帳があったから、今の63社・スタッフ約2500名のGMOインターネットグループがあると語る。その究極の手帳術とは、「人生の管理」を行なうことだった。
←くまがい・まさとし●1963年長野県生まれ。システム手帳を用いた人生のマネジメント術を考案。オリジナル手帳もプロデュース。『一冊の手帳で夢は必ずかなう』ほか著書多数。
熊谷さんが最初に書いたのは自分の夢だった。高校を中退し17歳から家業を手伝っていたが、仕事に忙殺される日々が続き、焦燥感にとらわれていた。その状況を打開するためにこう考えた。
「人生の行き先が決まっていなければ、どこに向かうべきかわからない。進むべき道となる夢や目標を決めよう」
そこで、将来何をやりたいのかを、片っ端から紙に書いた。自分の書いた文字を見たら、胸がスーッとして急にやる気が出てきた。
「しかし、そのまま書き散らしただけでは落書きと同じ。その夢をひと時も忘れないようにするために、その夢に優先順位をつけ、手帳に記して肌身離さず持ち歩くことにしたんです」と振り返る。
つまり、彼にとっては、手帳は単なるスケジュール管理帳ではなく、最初から人生の夢をかなえるためのツールだったのである。
このエピソードの中に、熊谷式手帳術の重要なエッセンスが2つある。1つ目は夢や目標を自分の手で書いて文字化する、という作業だ。熊谷さんはそのメリットを次のように語る。
「手で書くと自分の思いが文字に強く反映されます。文字への愛着も残り、頭の中に大切な言葉として残るのです」
2つ目は、常に持ち歩くことである。夢や目標を書いた手帳を、あたかも体の一部分のように携行する。この2つを実行するだけで、自分の夢を実現するために進むべき道を見失うことはなくなるという。熊谷さんは、21歳で手帳に書いた夢のひとつ、「35歳までに自分の会社を上場させる」を、35歳と1か月後に見事に実現させた。