4. 価格ではなく商品の魅力を訴求
トレーダージョーズでは、価格を表記したチラシは一切配布していません。
低価格をアピールするチラシではなく、魅力的な自社商品を訴求するためのメディアとしてフライヤーやホームページに注力しています。
フライヤーには新商品のおすすめポイントや、商品にまつわるエピソードなどが記載されています。
また、ホームページでは自社商品を使って作る料理のレシピや、「CUSTOMER CHOICE AWARDS(消費者が選ぶおすすめ商品ランキング)」を掲載して盛り上げています。食べたことのない商品がランクインしていると、購入せずにはいられなくなってきます。
消費者の視線を価格ではなく商品そのものに注目させ、売り上げ増加へと繋げています。
5. 「データ」ではなく「交流」で顧客と対話
トレーダージョーズの戦略を表現するエピソードとして、マーケティングディレクターの「誰もTrader Joe’sのデータベースにアクセスすることはできません。データがないからです。」という言葉があります。
「データが王様」とされている今日、小売業者は様々な顧客データを取得し、データ分析により顧客体験を最適化させる施策を生み出しています。
しかし、トレーダージョーズでは「データ」を使用する代わりに、「人」を用いて顧客体験を向上させています。
事実、トレーダージョーズに足を運ぶと、いつも店員が新商品を配布しています。データ分析から導出される結果ではなく、「試食」を通して定期的に顧客と対話することで、顧客から意見やフィードバックを得て、商品・サービス改善へと繋げているのです。
今後スーパーに求められる価値とは?
高品質・低価格で商品を提供するスキームを整えるだけでなく、独自のマーケティング戦略を実行し、顧客との信頼性を築くことで「ワクワクする店舗」を創り上げてきたトレーダージョーズ。
このようなスーパーは、日本には未だ存在していないと私は考えます。
日本のスーパーは、基本的にはどこも販売商品や店の造りに大きな差異はなく、価格のみが差別化要素になっている印象を受けます。
必要なものを購入するために買い物に行く場所であって、「何か面白い商品が出たかな?」とエンターテイメント体験を求めていく場所にはなっていません。
多くのスーパーが乱立し、オンラインショッピングも普及された今、今後スーパーには品揃えや価格だけでなく「どのような体験価値を与えてくれるか?」という要素が求められるようになるかもしれません。
文/小松佐保(Foody Style代表)