輸入車の右ハンドルでもウインカーレバーが左にあるのはなぜ?
メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンなどの輸入車に乗ったことがあれば分かると思うが、右ハンドル仕様車でもなぜかウインカーのレバーが左側にある。これが実に不便で、国産のウインカーが右側にあるクルマから乗り換えると、交差点などの右左折時に間違ってワイパーを作動させてしまい、恥ずかしい思いをしたことがある人もいるのではないだろうか。
さらに、ミッションがAT(オートマ)ならまだしもMT(マニュアル)の場合、頻繁にシフトチェンジも行い、ウインカーも操作しなければならないため左手ばかりが忙しくなる。左右のレバーを入れ替えるなんて技術的には簡単そうに思えるのだが、輸入車はなぜやらないだろうと疑問に思った方も多いはず。
実は、国際規格であるISO(国際標準化機構)で、「ウインカーレバーはステアリングコラムの左側」と決められているのだ。だから輸入車は、右ハンドルであってもウインカーレバーが左にある。
それに対し、左側通行で右ハンドルの日本では、やはりウインカーは右にあるのが合理的ということから、JIS(日本工業規格)で「ウインカーレバーは右側」と定められている。考えてみれば、昔のタクシーなどによくあったコラムシフト(変速シフトがステアリングについている)車なんて、ウインカーが左にあったら邪魔で使えないことだろう。
ちなみに、日本と同じ左側通行で右ハンドルのイギリスやオーストラリアでも、ISO規格に従ってウインカーレバーは左側で、さらに日本車も海外に輸出する場合は、同様に左側にウインカーレバーをつけている。
つまり、これほどまでに左右のウインカーレバーが混在するのは、日本ばかりであって、その理由についても理解できたと思う。ただ、やはりクルマ好きとしては、輸入車の右ハンドルでも快適に運転したいもの。
そう考え、日本のマーケットを重視しているという輸入車メーカーの開発者の方に、「日本で販売する右ハンドル仕様は、ウインカーを右につけ替えて欲しい」とお願いしたことがある。
すると「もちろん技術的には可能だ。ただし、それには数億円規模のコストがかかる。そのコストをかけられるのであれば、ほかの装備を充実させるなど、もっとやりたいことがあるので、それほど必要性を感じていない」とのことだった。
確かに、私もいままでに2台の輸入車を所有したことがあるが、左側のウインカーに戸惑うのは乗り換えた最初だけで、すぐに慣れてしまうもの。むしろ、左側通行の日本の道路事情において、左ハンドル車に乗るという使い勝手の悪さに比べれば、些細なことかも知れない。