倒立式が増殖しつつある理由は、ズバリ、カッコいいから。
また、倒立式はいいこと尽くしなのかというと、あながちそうとも言い切れません。細棒(インナーチューブ)の動きやすさは、実は正立式の方が勝っているとも言われているのです。あくまでもイメージですが、ガッチリパキパキと作動する倒立式、しなやかに滑らかに作動する正立式、という感じです。ですので、ライダーの操作に対するリニアリティやフィーリングを重視する派の間では、今でも正立式が愛されていますし、純正採用されているバイクも多数あります。
ホンダ CB1300 SUPER FOURの正立式フロントフォーク
倒立式が増殖しつつある理由は、ズバリ、カッコいいから。レーシングイメージで速そうに見える装備であることが大きく影響しています。特に速さやスポーティーなカッコよさに敏感なアジア諸国では、倒立式はセールス上の必須アイテム。従来は高価だとされていた倒立式ですが、数が増えることですっかりリーズナブルになり、小排気量車も含めて多くの車種に展開されるようになりました。
高性能であることは間違いない倒立式フロントフォークですが、正立式フロントフォークが劣っているというわけではありません。繊細で、なおかつフィーリングという数値化できないものが大きく影響するバイク界においては、新旧取り混ぜてさまざまな技術が現存するケースがよくあるのですが、フロントフォークはその好例です。
文/高橋 剛