つま先を光らせよう!
基本はこの流れで十分だ。だが今回はつま先を重点的に光らせてみる。そこで追加のクリームを投入。同じくKiwiの『シューポリッシュ黒』だ。ちなみに筆者の靴は濃いブラウンだが、この場合は黒を使っても特に違和感は出ない。
ブラシBを使って靴のつま先に塗るわけだが、これもまた「トン、トン、トン」程度の量で構わない。むしろ先程よりもさらに少ない量で十分だ。どうせつま先部分にしか塗らないのだから。
そこからブラシBで十分にクリームを広げた後、一旦布で吹いてさらにブラシCで光らせる。この辺りは先述と同様である。
ここまで作業するのに、慣れると両足30分程度で済んでしまう。さしたる重労働ではない。
だから、外出から帰る度に靴磨きをするのがベストである。日々の手入れをしているかそうでないかで、靴の寿命は大きく変わるものだ。
賛否両論のライター火炙り術
さて、ネットでもすでに出回っていることだが、自衛隊式靴磨きはライターを使う場合もある。
これはデマではなく、真実だ。革表面のクリームを取り切るのに、ライターの火で焼いてしまうという手法が駐屯地内で行われている。
ただし、先程のH田班長はそれに否定的だった。筆者の感覚では、ベテランの自衛官ほどライターで炙る方法にはNOを唱える傾向があったように思える。つまりライターは賛否両論が多い手法ということだ。
だから、この記事ではライターの使用はオススメしない。また、同じライターでも火力の強いターボライターは厳禁。これで革を本当に焼いてしまった者もいた。
ただ、それだけ自衛官は靴磨きに必死であるということは強調しておきたい。内情を打ち明けてしまうが、Kiwiの靴クリームは部隊では支給されない。官給品のクリームもあるが、こちらはお世辞にもいいものではないという評判である。だから自衛官の殆どは実費でKiwiを手に入れる。もう一度書くが、実費である。
しかしここで学んだ靴磨きは、退官後にも十分に活用できるものだ。特にイベントの立て続く年末年始は、自衛隊にいて良かったと思えてしまうほど。靴磨きで他の男に差をつけることができるのだ。考えてみれば、これほど有用なスキルは他にないかもしれない。
取材・文/澤田真一