本田宗一郎氏を中心とした技術者のアツイ思いが詰まっている
さて、カブなどに使われている自動遠心クラッチです。これはホンダの創業者・本田宗一郎を中心としたホンダ技術者たちが開発したスゴイ仕組みなのですが、内部構造および動作はあまりにも複雑です。とてもではありませんが昨今のウェブ記事ニーズに適した長さでは文章化できません。これも大ざっぱな理解でお許しいただきたいのですが、エンジンが回ると円盤に仕込まれたオモリが遠心力で外側に押しつけられ、その力を利用してクラッチをつなぐ、というものです。
エンジンが十分に回らないうちは、オモリは円盤の内側でしょんぼりしています。クラッチも切れた(つながっていない)状態です。エンジンの回転が上がるにつれて遠心力が高まり、オモリは少しずつ外側に出て行こうとします。その力を使ってクラッチをつなぎ、エンジンの動力をリヤタイヤに伝えるのです。「エンジンの回転が上がるにつれて、少しずつ」。これは人がクラッチ操作をする時の基本ですが、それを遠心力を利用することで自動化しているのです。
実際には、走行中のギアチェンジの際にクラッチを切る仕組みなども仕込まれており、遠心クラッチはとんでもなく複雑です。でも、カブユーザーになれば何も考えず、左手を使わず、発進〜ギアチェンジ〜停止ができます。ガシャコンガシャコンというサウンドには、日本の技術者の魂が込められています。
文/高橋 剛