毎年入社してくる新人たちに自分たちの常識が通じず頭を悩ませたことはないだろうか。今回は、そんな悩みを四半世紀にわたって大学生向け商品のプロモーションや大学生のマーケティングリサーチをしてきた渡部陽氏に「いま知っておくべき“ミレニアル世代”との働き方について聞いた。
「大学生」は時代が変わればまったく別の生き物
私は四半世紀に渡って大学生と接してきましたが、この数年、明らかに道徳的でおとなしい学生が増えています。先日、大学生のバンドサークルのライブイベントを見てきましたが、長髪や革ジャンを着たいわゆる“昔風”のバンドマンは1人もいませんでした。舞台を飛び跳ねたり、会場へダイブしたり、そんな無茶する学生もいません。
みんな予備校生みたいな恰好で、純粋に音楽を楽しんでいました。バブルの頃は、新宿コマ劇場前にあった噴水に、大学生がダイブするのが新歓イベント時の風物詩でした。それが原因かどうかはともかく、今は歌舞伎町の噴水もなくなってしまいました。
そんな時代を生きてきた先輩社員たちが、今の若者のおとなしさを、物足らないように表現する場面をよく目にします。しかし、今の若者からすると、換えのパンツもないのに噴水にダイブしたという自慢話の何が楽しいのでしょうか。今では炎上騒ぎになりかねません。
最新の新卒世代の“意外な特徴”とは
私は、新卒採用の売り手市場が特に顕著になったこの4年間に入社した若者の特徴を、以下のように捉えています。
・テレビを見ない
・車に乗らない、酒を飲まない
・親の誕生日や祖父母の誕生日も一緒にお祝い
・ゴミを分別する
・デジタルに慣れていて、インスタやSNSなどを使いこなす
最後のデジタルに慣れているという特徴は、意外な逞しさをもたらしています。Twitterでのつぶやきに対して、見知らぬ人から否定的な意見が出る、というようなことには意外と慣れています。例えばサークルで主催したイベントをいかにも“リア充”という雰囲気で写真をアップした結果、冷ややかな反応が数件出ることは、彼らからすると当たり前のことで、いちいち傷ついたりしません。
しかし、その反面、リアルでの刺激にはめっぽう弱いです。数年前までは就活が人生最大の苦労であった若者も、最近では売り手市場の影響からかその苦労すらしていません。苦労が少ないことが直接影響しているかはわかりませんが、直接的に怒られるような経験が少ないまま社会人になったので、新入社員がメンタル不調に陥りやすいようです。
今年の5月に新橋駅で教師に怒られた女子高生が過呼吸で運ばれたというニュースも記憶に新しいですが、親や祖父母とも仲の良い彼らは、人に怒られるという免疫ができていないかもしれません。