愛のムチは許容されるのか
いつぞやの中日ドラゴンズではありませんが、仮に、職場内で“鉄拳制裁”が行われたとします。そして、鉄拳制裁としてぶん殴った上司もぶん殴られた社員もこれは“愛のムチである”と考えていたとします。
2人の間では“麗しき師弟愛”として残るかもしれませんが、実際に発生した事象を組織として考えると、これは美談でも何でもなく、“パワハラ”以外のなにものでもないのです。なぜなら典型例の1)に該当するからです。
つまり、本人の受け取り方や師弟愛などの背景は関係なく、組織としては暴力行為そのものをパワハラと認め、対応しなければならないのです。
「過度」とはどこまでを「過度」というのか?のように、判断する要素に本人の受け取り方が関わってくることは少なからずあります。ただし、いくら『信頼関係がある』なんて言っても、“暴力”のような事実があれば、信頼など関係なくパワハラに該当するのです。
心当たりのある方は十分ご注意ください。なお、会社としては、それをパワハラとして対応する必要があるので「大げさだ」「二人の問題なので放っておいてほしい」など暴力行為を指導として正当化しようとしても看過できません。
最後に、私の社労士としての経験上、「俺とあいつはそんな関係じゃない」と言い張っている人ほど、実際には信頼関係など出来あがっていないことが多く、結果として堂々とパワハラを繰り返していますのでご注意ください。
文/大槻智之(社会保険労務士)
1972年4月東京生まれ。2010年3月明治大学大学院経営学研究科経営学専攻博士前期課程修了経営学修士、修士論文「人的資本から考える労働時間への影響 飲食業A社の労働環境事例から?」。1994年4月入所。社会保険労務士法人・大槻経営労務管理事務所への改組にともない銀座支社長に就任。2011年1月に統括局長就任。2013年12月に株式会社オオツキMを設立、代表取締役に就任。人事交流会・海外進出サポート・各種セミナー、人事スクール事業を提供するオオツキMクラブの運営をスタートさせる。さらに同月に海外進出サポート充実のためOTSUKI M SINGAPORE PTE,LTD.を設立し代表取締役に就任する。2014年1月には社会保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所初の海外拠点となるSHAROUSHI OTSUKIOFFICE SINGAPOREを開設し、社会保険労務士としても企業の海外進出サポートをスタートさせた。