なぜ、このタイミングで町田に目をつけたのか?
グループ会社のサイゲームスが鳥栖のスポンサーを務め、FWフェルナンド・トーレスや元日本代表のFW金崎夢生など多くの大物選手を次々と獲得するなど、着実に成果を上げ始めていた最中、なぜこのタイミングでサイバーエージェントはJ2・町田に目を付け、買収に乗り出したのだろうか?
理由の1つとして考えられるのは、Jリーグが昨年から10年間、イギリスのパフォームグループが運営するスポーツのライブストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」と放映権契約を締結し、約2100億円という莫大な資金を得ることになって以降、大きな転換期を迎えているということだ。
多くのクラブが“DAZNマネー”のさらなる恩恵を求めて、積極的な投資を行う潮流がリーグ全体に生まれており、楽天の三木谷浩史社長がオーナーを務めるJ1・ヴィッセル神戸がMFアンドレス・イニエスタを獲得するなど世界的なスーパースターが日本に来る流れもある。サイバーエージェントとしては、藤田社長が「Jリーグは成長性、将来性、ポテンシャルが非常に大きい」と述べたように、この絶好の投資のタイミングを逃したくないというのが本音だろう。
サイバーエージェントは過去に2年で撤退した過去も
さらに、ただ単にスポンサーを務めるのではなく、“経営の実権を握れる”という点にもこだわり、今後の集客や波及効果も見込みやすい関東圏のクラブを候補と考えた。
というのも、サイバーエージェントは2006年にJ2・東京ヴェルディと業務・資本提携し、日本テレビに次ぐ2位株主となったが、思うように経営に参画できず、成績不振も重なりわずか2年で撤退した苦い過去がある。
その反省もあり、“経営の実権を握れる”という点に強くこだわり、藤田社長曰く、今回も「最初に東京ヴェルディに声をかけた」そうだが、芳しい返事はもらえず、町田にターゲットを切り替えたとみられる。もちろん、町田が現在J2で3位につけるなど、上を目指せる戦力的な基盤が整っていることも大きいだろう。
町田はビッグクラブになれるのか?
1993年にJリーグが開幕した当初は、“Jリーグバブル”といわれる社会現象を引き起こすほどの人気だったが、近年は明らかに下火だった。しかし、DAZNとの放映権契約で莫大な資金を得たことで、流れは完全に変わった。楽天が率いる神戸のように“ビッグクラブ化”を推し進めるクラブの存在などもあり、現在はにわかに活気を取り戻しつつある。
このタイミングで、サイバーエージェントがJクラブを買収した事実からも「町田をビッグクラブにする」という本気度は十分に伝わる。将来的には町田がイニエスタのようなスター選手を獲得する展開も考えられるだろう。今後のJリーグからますます目が離せなくなってきた。
文/praia