工具としての肥後守
「肥後守」とは登録商標であり、兵庫県三木市の組合に所属する企業のみが使用を許される名称だ。
しかし、現在では永尾かね駒製作所のみがこの登録商標を引き継いでいる。それ以外の企業が製造する肥後守タイプのナイフは「肥後ナイフ」と呼称されることが多い。こちらはあくまでも普通名詞であることに注意していただきたい。
それにしても、肥後守はやはり「工具」であるというのが筆者の実感だ。
先述の通り、肥後守はオピネルよりもブレードに厚みがある。木工、石膏彫刻、またはアルミのような柔らかい金属をカットする目的で使えば、最高の逸品であることに間違いはないだろう。
ただ、日常使用する文具としては正直カッターナイフのほうが使いやすいとも感じている。肥後守の特徴である分厚いブレードは、用途によっては長所にも短所にもなるということだ。段ボールの開封や袋の端を少し切る等の用途では、カッターナイフより便利なものはない。
ここでは発想の切り替えが必要だ。たとえば日常使うものではなく、あくまでもいざという時の便利グッズとして肥後守を工具箱にしまっておくというのはいかがだろうか。コピー用紙を1枚カットするのならカッターナイフでもいいが、何かしらの理由で紙の束を裁断する場合は肥後守を使うという区別の仕方である。
もちろん、DIYやちょっとした工作であれば肥後守は大活躍必至。シンプルかつ低価格でありながら、その利便性は工夫次第で如何ようにも昇華する。他のナイフにはない奥深さが、世界中の肥後守マニアを夢中にさせているのだろう。
【参考】
永尾かね駒製作所
Quiet Carry
取材・文/澤田真一