なぜヤクザ担当はヤクザに似た風貌なのか
ところで、服装や身なりなどに関連して、ヤクザ担当の刑事はなぜヤクザに似た風貌をしているのか気になるところ。それにはちゃんとした理由があったそうだ。森氏は次のように話す。
「よく事件の聞き込みで刑事が訪れたときに『一瞬、本物のヤクザが来たのかと思ってびっくりしました』という声を聞くことがあります。暴力団担当刑事は、ヤクザによく似ているのは事実です。その理由として私が思うに、ある意味、担当刑事たちは“ヤクザが好きだから”ではないかと思っています。そもそも、ヤクザが嫌いな人は暴力団担当にはなりません。基本的には暴力団担当をやりたいと思う刑事しか暴力団担当にはならないのです。刑事にも向き不向きがあるのです。」
ヤクザ担当の刑事がヤクザに似ているのは、単にヤクザのファンだからだったということか。
「一緒に仕事をするとわかりますが、見た目だけでなく、雰囲気や話し方もそっくりです。しかし、それはただヤクザ好きだけが理由ではありません。相手が相手だけに、スーツやネクタイのサラリーマン風の身なりだとなめられてしまいますし、相手をある程度、威嚇するためにも、似たようなファッションにする必要もあるのです。
例えば、知能犯担当刑事は政治家や経営者と接触する機会が多いので相手に合わせてスーツ姿が多くなります。また、泥棒担当刑事はジーパンにTシャツの場合もあります。要するに対象に合わせて仕事をしやすくしているため、恰好も似てきてしまうのです。暴力団担当刑事が対象に合わせてヤクザっぽくなるのは仕方のないことなのです」
とはいえ、特に暴力団担当刑事は、正義感が強く、仕事のことになると途端に熱く語り出す者も多いとか。より刑事らしい刑事と言えるのかもしれない。
【取材協力】
森 透匡(もり ゆきまさ)氏
刑事塾 塾長
経営者の「人の悩み」解決コンサルタント(人事コンサルタント)
株式会社クリアウッド 代表取締役
警察の元警部。詐欺、横領、贈収賄事件等を扱う知能・経済犯担当の刑事を約20年経験。 東日本大震災を契機に独立し、刑事時代に現場で培ったコミュニケーションスキルをビジネスで役立ててもらうために「刑事塾」という学びの場を開講。「ウソや人間心理の見抜き方」を主なテーマに大手企業、経営者団体など毎年全国180か所以上で講演・セミナー・企業研修を行い、これまで5万人以上が聴講、「究極の心理学だ!」「おもしろい!」と人気を博している。テレビ朝日「モーニングバード」、フジテレビ「ノンストップ」、読売新聞、日経新聞などメディアへの出演、掲載も多数。著書に「元刑事が教えるウソと心理の見抜き方(明日香出版社)」がある。
http://clearwoods.co.jp/
取材・文/石原亜香利