ジャングルの中で裸で暮らすというライフスタイルへ
そんなフリーリーさんだが、最近になって食生活だけでなくライフスタイルをも激変。冒頭で述べたように、「コンクリートジャングルで仕事をする日々から、ジャングルで仕事をする日々」へと大転換。自家製の小屋で、電気・ガスを使わず、その地で獲れた果物や野菜を食べる自給自足の生活を始めた(SNSはできるよう最小限の太陽光発電設備はあるという)。
そればかりでなく、ノーメイクでノーファッション―つまり、1日の多くの時間をすっぴん&全裸で過ごすようにしているという。
画像:https://www.instagram.com/freeleethebananagirl/
フリーリーさんは、不健康な人間関係とも縁を切り、これまでの人生になかった自由を満喫していると言い、「これは幸運だったからでなく、あなたも実現できる生活です」と、究極のエコでヘルシーなライフスタイルをすすめている。彼女の最終目標は、周囲の資源を持続的に再利用しながらのゼロエミッションの達成だという。
とはいえ、一生このライフスタイルを続けるとは、彼女は明言していない。YouTubeにアップされた動画を見ると、野生のイノシシに作物を荒らされたり、気味の悪い虫が洗濯物についたりと、毎日が楽園のようにハッピーなことばかりではないことが分かる。何よりも、高い木の上のほうで実っている果実をなんとか採取しようとしている姿は、けっこう辛そうだ。日本の都会に住んでいるわれわれには、「自由でうらやましい」というよりも、「なんか酔狂な人だな」という印象が勝るかもしれない。
実は批判の多いダイエット法
ジャングルでの生活はさておき、フリーリーさんと支持者の女性たちが実践している「Raw Till 4 Diet」だが、批判も多いことで知られる。主たる批判者は、このダイエット法を実践したけれど効果が見られなかった人たち、そして医学や栄養学の専門家たちだ。これとは別に、「1日に何十個もの果物なんて、続けられない」と経済的・消化器官的なキャパな観点で批判する、まっとうな考えの持ち主もごまんといる。
専門家は、「Raw Till 4 Diet」は馬鹿げたダイエット法以外の何ものでもないと一蹴する。フリーリーさんたちに効果があったのは、たまたまそういう体質だった(あるいは当人たちは真面目に実践していない)からで、大多数の人には向いていないどころか、健康を損なうものだと警告する。
例えば、ビーガンに関する科学的情報を提供する非営利サイト“VeganMotivation.com”は、「Raw Till Flawed: The Pseudo-Science Behind the Raw Till 4 Diet」(Raw Tillの欠陥:Raw Till 4 Dietの裏にある疑似科学)にて、以下の問題を指摘している。
・ビーガンであろうとなかろうと、体内で燃焼できるよりも多くのカロリーを摂取して痩せるはずがない。基本的な科学の法則に反している。
・バナナを多量に食べることで血中カリウムが過多となり、腎不全を引き起こすリスクが大きくなる。特に既に腎臓病を患っている人が、バナナを食べ過ぎると死亡の可能性すらある。
・日中はしじゅう果物を食べていると、口内が常に酸性に傾き歯の腐食を促し、消化器官がいつも働きっぱなしとなって健康を損なう。
そして、フリーリーさんが、ごくノーマルなビーガン食ではなく「Raw Till 4 Diet」に固執するのは、お金を稼ぐためにはふつうではないダイエット法を提唱するしかないからだとも。確かに世界で何万人といるビーガン食トレーナーと同じことをやっていると、本を書いても似たような数々のダイエット本の中に埋もれ、YouTubeの動画を視聴する人は激減するだろう。
“VeganMotivation.com”は、フリーリーさんのダイエット法を痛烈に批判
世の中には目を引くダイエット法やエクササイズ法が毎日のように生み出されているが、冷静に考えてみると、メリットよりも問題点のほうが多いことがわかる。フリーリーさんの生き方に共感しても、食べ方には距離を置いたほうがよさそうである。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)