「ジェットパック」……と言っても、背負った装置から勢い良く水流を噴き出して浮かび上がるマリンスポーツではなくて、今回は石油燃料を燃焼させて滑空する、SFもどきの飛行装置の話。
そうした装置を付けて人間が飛ぶ映像は、テレビやネットニュースで何回かご覧になっているかもしれない。あの手のモノは、大規模なフェスティバルで観衆を盛り上げるために飛ばす商用マシンかと思いきや、今やぐっと身近な存在になりつつある。今回はその中から3モデルを紹介しよう。
デパートで買えるジェットパック「ダイダロス」
イギリスのスタートアップ、グラビティ・インダストリーズ社が生み出した「ダイダロス」は、それまであった競合製品が時代遅れの産物に見えてしまうポテンシャルを秘めたジェットパックだ。
これは、背中に2本、両腕に合わせて4本の超小型ガスタービンを装着した飛行装置で、理論上は時速450kmで飛べる。設計者を含め、誰もそこまでの速度を試していないが、湖上で100mの距離を時速51.5kmで滑空して、ギネス世界記録に認定されている。垂直離着陸も当然可能だそうで、もはやSF映画『アイアンマン』の数歩手前まで来ている感がある。
空軍機をバックに離昇する「ダイダロス」の雄姿(画像:Gravity Industries)
「ダイダロス」は、16か国での45回以上のデモ飛行を含む、徹底的なテスト飛行を繰り返してその実用性・安全性を検証した。それが認められて2018年7月に、晴れてイギリスの老舗高級デパート「セルフリッジズ」で一般販売が開始された。
「ダイダロス」の一般販売が動画付きで告知された「セルフリッジズ」公式サイト
同店のキャッチコピーは「みんなジェットスーツが必要ですよね?」だが、一般庶民が服や食品を買ったついでに衝動買いするのは、ちょっと厳しい。なにしろ価格は34万ポンド(約476万円)。ロンドン郊外の専用施設で、トレーニングプログラムを受講する義務はおいても、金額面でのハードルは、「ダイダロス」の上昇限界約3700mよりも高い。発売から1か月が過ぎ、今のところ購入者が現れたというニュースはない。