日本にはVARをこなせるプロレフリーは14人のみ
「今はプロレフリーを中心とした14人だけしかVARをこなせる人がいないので、どうやって審判を養成していくかを考えなければいけません。JFAの小川佳実審判委員長とも話し合っていますが、いきなりパイを増やすことは質の低下につながる。しかもVARを養成するスタッフもまだ日本にはおらず、IFABのエラリー氏にお願いしている状況です。そこを改善していくことが第一歩だと思います。
2つ目の問題はどのプロバイダー(機器提供先)を使うか。映像と音声を確実に送るためには信頼性の高い会社を選ばなければいけません。現状ではコストも会社によってまちまちで、まだ絞り込めていないのが実情です。日本は通信回線利用料が高いため、ロシアワールドカップのようにメディアセンターを作って、そことスタジアムを結んでオンラインで主審と意思疎通する形は現実的ではないかもしれません。一方で、SBSカップのように毎回、スタジアムまでバンで乗り付けるには人・カネ・モノ・時間もかかります。そこも考えなければいけないテーマになってきます。
3つ目は選手や監督、クラブ、メディアなど関係者の理解を取り付けること。Jリーグの強化担当者会議でもVARのトライアルを進めていくという説明はしていますが、まだ具体的にどんな変化が起きるのかは誰も分からない。今回のロシア大会を見て少しは具体的なイメージを持ってもらえたとは思うので、ここから本格的に理解を深めていきたいと考えています」と黒田本部長は語る。
彼自身はサッカーの質の向上のためにもVAR導入を進めたい気持ちは強いという。早ければ2019年にもJリーグでトライアルを行いたいと考えも持っているというが、果たして今後はどうなっていくのか。Jリーグの取り組みに期待しつつ、興味深く見守りたい。
取材・文/元川悦子