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JリーグでのVAR判定導入が困難な理由

2018.08.26

Fabrizio Andrea Bertani / Shutterstock.com

 2018年ロシアワールドカップで採用されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)判定だが、日本では5月30日に日産スタジアムで行われた日本代表対ガーナ代表戦での実施など実例は数少ない。欧州ではドイツ・ブンデスリーガ、リーガ・エスパニョーラなどですでに導入され、アジアでも韓国、中国、オーストラリア、サウジアラビア、カタールで先行して運用が始まっているが、Jリーグでの導入はなかなか難しいようだ。

高校生年代の大会で初めてトライアルへ

「Jリーグでは昨年10月に『VARプロジェクト』を立ち上げ、日本サッカー協会と協力しながらトライアルを進めています。今年2月にはVARの原案を作った国際サッカー評議会(IFAB)のデービッド・エラリー氏に来日していただいて、プロフェッショナルレフリー14人を中心とした計18人の教育をスタートさせ、3月には機械を使ったトレーニングを実施。4月にはJリーグ4試合で主審と交信のないオフライン状態での実践練習をやりました。そして6月・7月には大学生に協力してもらって15分程度のゲームを行いながら、DFのひじ打ちやホールディング、ハンドなどVAR適用につながりそうな状況を想定しながらオンラインでテストをしました。そして8月16~19日の『SBSカップ』という高校生年代の大会で初めてトライアルに踏み切りました」とJリーグの黒田卓志フットボール本部長はここまでの流れを説明する。

 SBSカップ最終日だった8月19日にはVAR機器がメディアに公開された。まずピッチ上には主審が見るモニターが置かれている「レフリー・レビュー・エリア」があった。これは横幅がモニターから左右各1mずつ、タテが4mという長方形のエリアで、主審が外部から干渉を受けないように配慮されている。アメリカのメジャーリーグサッカーではiPadが使用されているため、このエリアは設置されていないという。

 一方、VARの方は映像機器が詰まれたバンがテレビ中継車の近くに置かれ、中継車が使っている回線を使いながら主審とコンタクトを取る形になっていた。

 スタジアムには8台のカメラが設置されていて、そこから送られてくる映像が6つのモニター(上段に2台・下段に4台)で表示される。VARは上段左のモニター(1)を見るのが基本だが、何かあったら3秒遅れで映像が流れていて4分割されている下段の左から2番目のモニター(2)で確認することになる。上段右のモニター(3)はテレビ中継映像で、稀にこちらの方が問題のシーンをいい角度から映していることがある。VARは時にそちらも参考にしている。

 AVAR(アシスタント・ビデオ・アシスタント・レフリー)は下段左端のモニターを見る。この映像は(1)と同じ。VARが(2)や(3)を見ている時もあるので、何もないかチェックするのがAVARの役目だ。そしてもう1人のリプレイ・オペレーターは下段の右から2番目のモニター(5)を見て、タグをつける役割を担っている。その隣に映像トラブル対応のサポート役がいて、下段右端のモニター(6)を見るという形を採っていた。VARとAVAR、リプレイ・オペレーターの3人が基本セットで、あくまで(6)を見る技術者は補佐。それでも最低これだけの陣容と設備を整えなければVAR判定を導入できない。しかも費用負担も10万円単位ではないというから莫大だ。Jリーグでの導入がどれだけハードルの高いものかがよく分かるだろう。

 しかも、これだけのインフラを整えたにも関わらず、SBSカップの6試合では一度も主審がVAR判定をするチャンスがなかった。大会ラストだったU-18日本代表対U-18パラグアイ代表戦で、パラグアイの先制弾がオフサイドか否かが微妙な状況ではあったのだが、主審は副審と連携の上、迷わずゴールを認定。Jリーグ側は9月と12月にも育成年代の大会でテストを予定しているが、レフリーがVAR判定の質を高めていくには、やはりJリーグと同レベルでトライアルを積み重ねていくことが必要になる。今後に向けてはまだまだ課題が多いのだ。

緑の「Bookmark」となっているのが、リプレイ・オペレーターがタグをつけた時の様子。赤い枠線が光っている時が主審と交信中。

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