●SUNVALLEY『SV-S1628D/211』
次はいよいよ送信管を使ったアンプである。SUNVALLEYの原点ともなった『SV-2』も真空管に『845』を使ったシングルパワーアンプだったという。今回は姉妹管の『211』も使える設計となり復活したキット『SV-S1628D』の音を聞く。送信管はシングルでも出力が稼げ、大型の真空管でヒーターも明るいため迫力満点。キットとしても作りたくなる魅力にあふれている。
全体的にウォームな音で多極管プッシュプルとは全く違う音の世界に突入。女性ボーカルはなめらかで力強く歌う。真空管らしさが帰ってきた。ドラムスも弾むような音。この真空管アンプは作ってみたいと思わせてくれる。
迫力の送信管。トリウムダングステンフィラメントが煌々と輝く。
●SUNVALLEY『SV-S1628D/845』
見た目は全く同じだが、オーディオ用に高域特性を改善した『845』に球を差し換えて聞く。『SV-S1628D』はトグルスイッチの切り換えのみで『211』と『845』の両方の真空管に対応している。プレート電圧1000V近くなるため、他社のキットはなく845が聞けるのはSUNVALLEYだけなのだ。大橋店主によれば今までに1万台以上販売しているが事故は1件もなく、高電圧を扱うため制作者も他のアンプより慎重になり、何度も見直してから電源を入れている人が多いそうだ。
これは解像度が高くワイドレンジでキレがいい。響きは集約されソリッドな音になった。なめらかから粒立ちのいい音になった。これは211が進化した音なのだろうが、私は211の方が魅力的に感じられた。
●SUNVALLEY『SV-91B』
最後にSUNVALLEYのハイエンドアンプで300Bを再び聞いてみよう! ということになり『SV-91B』が登場。真空管なしのキットで29万円である。真空管にPSVANE WEを付属したキットでは43万5000円になる。大型出力トランスを使い、300Bをフルスイングさせるマルチループフィードバック回路を採用しているそうだ。
300Bシングルなんだから、そんなに音は変わらないだろうと思っていたら、これが先ほどとはうって変わってフォーカスが合った力強い音になった。凛とした音で、甘口だった300Bシングルとは全く違う音だ。私としては、最初と本機の中間ぐらいの響きがいいと思ったのだが、やはりアンプは回路設計が大事ということ実感した1台だった。