スポーツ時の飲み方も「点滴飲み」が良い
通常よりもたくさん汗をかくときや、スポーツをするときにはどのように飲むのがいいのだろうか。河村先生は飲み方を次のように教える。
●日頃から脱水予防を
「激しい運動や激しく汗をかくことが多い人は、日頃から脱水予防を心がけ、汗をかかない状態で水1.5リットルを午前中500cc、午後500cc、夕食後寝るまでに500ccと分けて点滴飲みをする予防対策が必要です。さらに、夜間の脱水にも気をつけ、トイレ覚醒時には水分補給を欠かさないようにします。夜中にトイレで目が覚めるほうが正常反応です」
●運動前・運動中
「運動する前の準備として、500ccの水分を1時間かけて飲んでおくとより安全です。運動中は30分ごとに休憩をとり、涼しい場所で500ccの水分を30分以上かけて点滴飲みをし、汗が収まるまで待つことが脱水予防になります」
スポーツ時のドリンクは?
世間では、スポーツ時は、エネルギーを要するためにスポーツドリンクのような糖入り飲料も推奨されている。スポーツ時にはどのようなドリンクを選べばいいか。
●市販のスポーツドリンク
「糖質によって血液と同じ浸透圧に調節されています。運動時には糖質補給になりますが、糖質がエネルギーとして利用されるには、膵臓からのインスリン分泌が必要で、頻繁に飲めば間食と同じになります。ペットボトル症候群と言われ、糖尿病の原因になります」
●市販の経口補水液
「熱中症に対する点滴治療に使用される電解質輸液を経口にて補給する目的に使用されます。したがって、脱水症状が見られる場合に飲用するのは問題ないですが、予防的に飲むことはナトリウムの過剰摂取につながりますので予防的飲用は勧められません」
●ミネラル入りむぎ茶
「無糖でカロリーやカフェインがないミネラル入りむぎ茶は、健康的にスポーツを楽しむ層にとって“無糖のスポーツドリンク”としておすすめです」
大学駅伝の強豪チームである、東洋大学陸上競技部の駅伝チームは、日常生活で体調を整える目的で、ミネラル入りむぎ茶を取り入れているという。無糖でカフェインゼロの「コンディショニング飲料」として重宝しているそうだ。
夏といえばむぎ茶。何気なく飲んでいたが、ミネラル入りむぎ茶は意外にも熱中症予防に好適な飲料だったようだ。まだまだ猛暑は続く、水やミネラルウォーター、むぎ茶以外のお茶、水道水でも構わないが、点滴飲みの水分補給で早め早めの対策を心がけよう。
【取材協力】
河村剛史先生
河村循環器病クリニック院長
日本循環器学会認定 循環器専門医/心臓血管外科名誉専門医
日本医師会認定 健康スポーツ医/産業医/健康スポーツ関連施設連絡協議会会長
取材・文/石原亜香利