「ジャストフィット」「ファッション性」「機能性」の3本柱
――では、新生『BROS』のモノ作りについて教えてください。
稲積:デイリーに使って欲しいブランドですから、下着のラインがお尻をきれいに包み込む「ジャストフィット」が基本。そのうえで、『BROS』の軸としているのが、顕在化していない〝隠れた悩み〟の原因追求と解決。弊社の体や下着の研究開発部門である「ワコール人間科学研究所」と共に検討しています。
――どういった基準で「ジャストフィット」を実現しているのでしょうか?
前田:ひとつは、ワコール人間科学研究所で収集したデータから割り出した、日本人体型にあわせたオリジナルの〝設計用ダミー〟が基準になっています。
稲積:それから社内モニターを使ったテストですね。「M」サイズひとつとっても許容範囲がありますので、「S」に近い方、「M」の中間の方、「L」に近い方、筋肉質の方など、ひとつのサイズで3~4名を募集しまして、フィッティングのほか、数日間、日常生活の中で試作品を試してもらい、そのはき心地も確認しています。試作品をはいて、ジムに出かけたり、自転車に乗られたりするモニターもいますから、品質基準値以上の耐久性が必要になるんですけどね。それと商品化する前の試作品は、女性の私も試すことにしているんですよ。
――稲積さん自らが試作品を? それはどうして?
前田:実は、インナーウエアの着用感が与える印象には、男女差がないことが、ワコール人間科学研究所の研究でわかったんです。そこで女性に人気の生地を男性下着に採用することもあるのです。実際、これまで男性用下着は綿素材が主力でしたが、『BROS』の場合は、エステルなどのようにシルキーな肌触りが特徴の下着が非常に人気。そういったところに、女性デザイナーらしい感度が生きていると思います。
稲積:ただひとつ懸念点を挙げるとすれば、男性部の悩みだけはよくわかりません。前田と協力して、他ブランドとも比較するようにしています。そこで人間科学研究所と一緒に開発したのが「肌側ポジフィット構造」の下着です。
ボクサーパンツ(前閉じ)2300円/ブロス
稲積:ポジションのズレが起こる一番の原因は、着座する際にフィット感が緩んでしまうことにあったんです。「肌側ポジフィット構造」は、フロント部分の当て布が独立して男性部全体を包み込むことで、快適なポジションをキープできる特許技術です。さらに股下の縫い目の位置にも配慮しています。この夏の新作では、フロント部の当て布をメッシュ生地にすることで、通気性も高めましたよ。
前田:この「肌側ポジフィット構造」は、着用した感想を「ハンモックのよう……」などとおっしゃる方もいまして、言い得て妙だな、と(笑)。確かに、ブラジャーのトレンドが〝快適さ〟にあるように、『BROS』でもデイリーな快適さを追求していますし、もうひとつ、新次元の快適さを実現した機能に「ダブルエアスルー機能」も採用しています。