管理職を望まない女性への思い
杉浦さんは、管理職を望まない女性に対して、どのような思いを抱いているのか。
「その方の選択でいいと思っています。キャリアや人生における価値観や、人生のステージ、やりたいこと、得意なことはそれぞれ違います。実際、椅子の数は限られており、全員が管理職になれるわけでもありません。
ただ可能性があり、周りの期待もあるのに、自信のなさや不安だけで尻込みするのはもったいないと思います。その場合、一度やってみてから考えることもできます。できるかどうかでいえばできるはずだし、やれるはず。だから、尻込みだけはしないで、チャンスがあればチャレンジしてほしいですね」
杉浦さんによると、女性が管理職を望まない理由として多いことに「ワークライフバランスの不安」「責任が大きくなることへの不安」があるという。
「先にも述べた通り、管理職になるとワークライフバランスは、よりコントロールしやすくなります。責任が大きくなる不安については、自分の上司は必ずいて、上位の人が監督し責任を持ってくれるので安心してください。また今まで自分がやっていた仕事は部下の人たちが責任を持ちます。もちろん監督責任はありますが。自分の仕事に対しての責任という意味では変わらないのです」
女性管理職の面白さを知る方法は?
女性活躍が推進される中、女性が管理職の面白さを知るためにはどのような方法があるだろうか。
1.“なったつもり”になること。
「一つ上位のポジションにいる“つもり”で考え、ふるまってみてください。例えば『マネージャーとしてこの仕事をするとしたら…』と思うだけで、視座が一段上がり、“ただやる”から、その成果を判断する視点が出てきたり、その仕事の先を想像したり。今まで“ただやる”では見えなかった、たくさんの視点がみえてくるはずです。それだけで、仕事の意義が強まり、やる気も上がって、仕事が楽しくなります。
その上で、実際に、予算や仕事の役割分担やチームの働き方をマネジメントする裁量を得られるとしたら、どうでしょう? もっとこういうことしたい。チームのためにこうしてあげたい、そんな気持ちが生まれると思います」
2.管理職の方と話をしてみる
「男女問わず、管理職の方と話をしてみるのもいいですね。『仕事をしていて最近よかったことは?』『楽しいことは?』とポジティブな答えを引き出す質問が大切です。直属の上司だけでなく、素敵だなと思う方や、似たようなバックグラウンドがあるような方を、先輩や人事に紹介してもらうのも良いと思います」
3.社外で活躍している人の話を聞く
「社外で活躍している友人、知人、先輩、ママ友や交流会で出会った方々に、管理職問わずポジティブな体験談を聞くのは、とても参考になると思います。『そんな働き方もあるんだ~』と、視野も広がります」
女性の管理職はワークライフバランスをコントロールしやすくなり、さらにこれまでよりも仕事が楽しくなるなどメリットは大きいようだ。管理職へのイメージを払拭するためにも、まずは「なってみる」「話を聞く」というのもよさそうだ。
【取材協力】
杉浦里多さん
LVMH、P&Gを経て、株式会社デリィスを設立。「もっと素敵なワーク&ライフへ変えるパートナー」として、ダイバーシティ&女性活躍の推進、女性向け商品・サービスのブランディング&マーケティングサポートを行う。保育園に12年通う二児のワーキングママ。著書に「1年で成果を出すP&G式10の習慣」(祥伝社)など多数。
http://www.delice-delice.com/
取材・文/石原亜香利