「あいつ(部下)は、何を考えているのか分からない」「何か隠しているようだ」など、上司の立場として悩んでいないだろうか。常に部下からホンネを引き出すことは、ビジネスを順調に進めるためにも欠かせないことだ。
そこで今回は、元刑事で現在は経営コンサルタントとして活躍する森透匡氏に、刑事時代に現場で得た経験をもとに、部下のホンネを引き出す方法を教えてもらった。
「何を考えているのか分からない」とホンネを語らない部下への対処法
上司が部下に対して「あいつは何を考えているのか分からない…」という場合、森氏は次の対策があるという。
●日頃から部下に興味を持つ
「信頼関係があってこそ、部下はホンネを話すもの。部下と信頼関係を築くには、まずは上司である自分から部下に興味を示す必要があります。人間は興味を持った人の情報には敏感になりますし、自然と情報も舞い込んでくるものです。例えば、部下の親族に不幸があったことなども同僚の会話の中から知ることができます。そうするとその部下から聞く前に『大変だったね』と声をかけることも可能。興味を持っているからこそ、些細な情報も入ってくるのです。あとは会話の糸口に使ったりすればコミュケーションもとりやすくなります。こうやって肝心なときにホンネを引き出すための信頼関係を築いていくのです」
●ホンネを聞く場所に考慮する
「例えば、部下からホンネを引き出したいときに、体育館の真ん中にある椅子に座らせて話を聞いたらホンネは出るでしょうか。話したくない要素が満載ですよね。つまり人間には話をしたくなる環境があるのです。では公園のベンチで横並びに座り、紅葉でも見ながらゆったりと話をするのはどうでしょうか。横並びだと、変な緊張もなくホンネが話せたりするものです。ドライブのデートで運転席と助手席に座って話しているといつもより会話が盛り上がったりしますよね。これも横並び効果です。つまり相手との位置関係も大事ということ。
ちなみに警察の取調室は真っ白な壁に囲まれている3畳くらいの個室です。天井の高さもそこそこあり、隣に話が漏れない構造にもなっています。つまり話しやすい状況をあえて作り出しているわけです。部下からホンネを聞きたいと思ったら聞く場所にも配慮してください」
●自己開示する
「部下からホンネを引き出すには上司自らの『自己開示』も欠かせません。部下が自分と話しにくそうにしているなら、最近観た映画やドラマの話、また趣味の話を自分から振ってみましょう。特に効果的なのは『失敗談』です。誰しも失敗はしますが、上司ならなおさら自分から失敗談を話すことはそうありません。しかし、失敗を話すことは最大の自己開示ですから、部下はかなりの親近感を持つはずです。つまり上司から心を開きやすい環境を作ってあげるとおのずと部下も心を開くようになるのです。
これは、私が刑事時代に経験した犯罪者の取り調べでも同じです。取調官が自己開示して自分のことを話せば、徐々に相手は心を開き、ホンネを話してくれるようになります。相手と信頼関係を築き、相手に心を開かせることなく、取調べで重要な話を引き出すことはできません。部下との関係も同様に、相手に興味を持ち、上司自ら自己開示すること。そうやってホンネを語ることのできる環境にしていくのです」
●聞き役に徹し、しぐさや話し方を観察する
「部下と会話するときは、できるだけ聞き役に徹してください。そうするといろんなことが見えてきます。例えば、妙な『間』が空くと、言いにくいことがあると気づきます。特に間のときに顔がこわばったり、ひきつったりしたらウソのサイン。口元など顔に手をやる、体がこちらをきちんと向いているかなどもウソのサインです。また反対に機関銃のように間がなく話し続けるときも要注意。偽のストーリーであることから、早く伝えようという意識が働いている可能性があります。つまり非言語コミュニケーションで発するサインを読み取りながら心理を読み、ホンネを語らせるように仕向けることも大事です。」