【先人を超えたい!圧倒的な向上心を持ち続けた高校時代の大谷翔平】
「二刀流」の投打の大活躍で全米にもその名を轟かせている23歳のスーパースター。野球のすべてを愛し、礼儀正しいことで知られる彼の本質を、15歳の時から取材し続けるスポーツライター・佐々木亨さんが語った。
大谷翔平/1994年7月5日生まれ。岩手県出身。小学校3年時に野球を始める。水沢南中学を経て、菊池雄星に憧れ花巻東高校へ進学。高校2年夏、3年春の甲子園に出場。2013年から北海道日本ハムファイターズでプレー。5年間で投手として通算42勝、防御率2.52。打者として通算48本塁打、打率.286。2018年からロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムへ。
[花巻東高校]
先人を超えたいという圧倒的な向上心を持つ
そんな彼の思考は、高校時代の3年間で確かな根を張った。花巻東高校の佐々木監督との出会いが大きかった。
恩師は、言葉が持つ力を深く考え、選手への言葉かけを大切にする指導者だ。かつての佐々木監督の言葉を思い出す。
「私自身、これまで歴史上の人物や出会った方々の言葉に影響を受けてきました。先人たちが語り、残してきた言葉を本などで学ぶことが多いんです。そこで感じるのは、言葉には魂があるということです。よく『言霊』と言いますが、ひとつひとつの言葉に魂を揺さぶられることがある。だから、私が影響を受けた言葉を生徒たちにも教えてあげたいと思うんです」
高校時代の大谷は、監督からもらった言葉に魂を揺さぶられた。花巻東高校のチームスローガンでもある『決してあきらめない』という言葉もそうだし、『先入観は可能を不可能にする』という言葉も、今でもはっきりと大谷の脳裏に刻まれている。佐々木監督の言葉だ。
「例えば160kmの球を投げるというイメージがそもそもなければ、絶対にそこまでたどり着かないものだと思います。できると思う、出せると思うから、そのためにがんばるのです」
自分は「これしかできない」、高校生だから「160kmは投げられない」。そんな世間の常識や価値観、先入観から来る限られた物差しで物事を見てはいけない。大谷に対して、佐々木監督は懇々と言い続けた。