近頃ランニングシューズのキーワードとして急浮上しているのが「厚底」。これまで上級者は薄くて軽い反発性の高いソールでスピードを求めて、初心者はソールが厚く重いクッション性の高いシューズで足を守る、という使い方をするのが一般的だった。
しかし素材の進歩によって「軽く厚いソール」が登場。これによってスピードランナーでもクッション性が高いシューズを使用することが増えつつある。
さまざまなブランドから厚底のシューズはリリースされはじめているが、その中でも特に個性的なブランドが「HOKA ONE ONE」(ホカオネオネ)。2009年のブランド設立当初から、ランナーのダメージを緩和させることを考えた厚いソールを使用したシューズを製作。特に過酷なレースであるトレイルランやトライアスロンの世界で人気を集めていることからも、その信頼性の高さがうかがえる。
ここで紹介する『MACH(マッハ)』は、かかと部分のソールの厚さが24mmと一般的なランニングシューズとしては厚いが、同ブランドの『CLIFTON4』『BONDI5』などと比べると薄い軽量モデル。
「『MACH』は軽さと、反発性、反応性を高めたモデルです。HOKA ONE ONEといえば、長い距離を楽に走るためにクッション性がものすごく高いものが多いですが、これはスピードと軽さを重視したモデルです。5㎞からフルマラソンくらいの距離に対応するシューズになります」
とマーケティングマネージャーの青木亮輔さんは解説する。
HOKA ONE ONEのシューズといえば、ロッキングチェアのようにシューズの前後をそぎ落とした「メタロッカーテクノロジー」という独自のソール形状も特長のひとつ。これによりタイヤがころころと転がるように、自然に身体を前方に導いてくれる。
『MACH』にもそのテクノロジーは継承されているが、ほかのモデルと比べると反発性が高め。ころころ進む感覚に加えて、バネのような反発が身体をグンと前に押し出す。
それをもたらしているのがミッドソールに使用している「PRO-FLY(プロフライ)」という素材。つま先側をかかと側よりも硬くすることで、ソールが板バネのようにしなり推進力を生み出す。さらに反発性の高い素材「R-MAT(アールマット)」をアウトソールに加えることで耐久性と反発性をさらに高めている。
このように反発性が高く、硬めの素材を使用しているように思えるが、履き心地はほかのモデルと同様。マシュマロのようなフワフワの感触が足裏に伝わってくる。実際に走ってみてもその感触は変わらないが、反発性が高くフワッと着地した後に、身体が前に進んでいく加速感がある。