また、橋の手前に1本だけ象徴的に残された柳の木の前には、1946年創業の老舗天ぷら店、『大黒家』(MAP 5)がある。創業当初の味のある木造家屋は、2004年にコンクリート製に建て替えられてしまったが、店内のたたずまいは、柱1本、椅子1つまで昔のまま。デートで行くなら鉄板の店だ。
この橋の通りを左に曲がった先が、元料亭と一目でわかる黒塀の日本家屋が多数残った、昔の花街。縦横に走る裏路地には、1854年(安政元年)創業の江戸料理店『亀清楼』(MAP 6 。現在、東京五輪を目処に建て替え中)を筆頭に、とんかつの『百万石』(MAP 7)、鮨の『美家古鮨・本店』(MAP 8)、うなぎの『よし田』(MAP 9)といった純和風の料理店がひっそりとたたずんでいる。
中でも、慶應2年創業を謳う『美家古鮨・本店』は、東京屈指のロケーションとたたずまいの鮨店。店内は壁にテレビがあったりして、いささかダサいのだが(この界隈にはそういう店が多い)、40年前の東京の鮨屋のスタンダードだと思えば、それも納得。2人でたっぷり食べても料金は1万4000円前後と、町場の鮨屋並みだ。
こうした飲食店に混じって、「トスカーナ植物タンニンなめし革専門店」の『ウインズファクトリー』(MAP 10)とか、一泊3000円の清潔な『東京隅田川ユースホステル』(MAPのやや北上)とかいった、よそではお目にかかれない面白い店が点在しているのも、この街の大きな魅力だ。
デートで来た場合、仕上げは神田川沿いの「ベルモント・ホテル」(MAP 11)へ。翌朝目覚めてカーテンを開けたとき、窓外に神田川の舟宿が見えれば、彼女の感動もひとしお。予約時には、リバーサイドの部屋のご指定をお忘れなく。
『大黒家』
店に上がると、川に面した2階の座敷に通され、お茶を一杯。その後、隣のカウンターのある和室で天ぷらを食べるという昔ながらのスタイル。各所に江戸の粋がにじみ出た店。
◆電話:03・3851・4560 ◆住所:台東区柳橋1-2-1 ◆11:30~21:00
『美家古鮨・本店』
神保町『鶴八』の先代・師岡幸夫が若き日に修行し、師岡の青春をNHKがドラマ化した『イキのいいヤツ』の舞台になった店。幅広のつけ台は江戸前の伝統形式。隣には座敷席だけの別館もある。
◆電話:03・3851・7494 ◆住所:台東区柳橋1-10-12 ◆11:30~21:00 日祝休
取材・文/ホイチョイ・プロダクションズ
※記事内のデータ等については取材時のものです。