■印画紙に画像を焼く
ところで、フィルム写真ということは画像を印画紙に焼かなければならないということだ。
もっとも、現代ではそれをせずにデジタルデータとして保存する手段もある。ただそうはいっても、画像を1枚の紙にすることがフィルム写真の醍醐味ではないか。
今回は、敢えて公営施設の暗室を借りて現像した。ここには引き伸ばし機がある。家内制手工業で写真を現像することも可能だ。
この引き伸ばし機を使えば、フィルムの画像をデジタル化することなく印画紙に焼くことができる。というのも、現代の写真現像は画像を一度デジタルデータとして処理する場合が殆どなのだ。
しかし画像をJPEGにしてしまう以上、デジタルノイズからはどうしても逃れられない。
「画像をデジタルデータにすると、フィルム状の傷や埃もすべて処理してくれます。それに比べたら完全アナログ焼きの仕事は本当に大変です。私の『働き方改革』なんて、とてもとても……」
坂野氏はそう苦笑した。
■フィルム写真の「苦労」
撮影をする上でも、フィルム写真は確かに苦労が多い。
デジカメよりも天候に左右されやすいというのもあるし、せっかく撮った写真もすぐにチェックできるというわけではない。最近では多くの写真店が白黒フィルムの処理を請け負わなくなった。だからその店ではとりあえずフィルムを預かり、それを別の業者へ郵送する。そうすると早くても1週間弱の時間がかかってしまう。
だがその分だけ、1ショットを慎重に撮る癖がつく。
「白黒写真は、本人の好み次第でいろいろと遊ぶこともできます。たとえばこうして、カラーフィルターを通して焼くことも可能です」
今や誰しもがカメラを常備する時代になった。しかしだからこそ、フィルム写真独特の画質が「新鮮なもの」として見直されつつある。
少なくとも、フィルムカメラの「絶滅」はまだまだ遠い未来の話になりそうだ。
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取材・文/澤田真一