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デジタルの時代だからこそ覚えておきたい「銀塩白黒フィルム」の魅力

2018.05.30

■フィルム写真特有の「描写」

 スマホで撮った写真の場合、細かいものの描写はどうしても「ピクセル感」が出てしまう。

 デジタル写真とは、言い換えれば「ブロックの塊」だ。FAXで出力された文字を虫眼鏡で見れば、それが分かるはずだ。つまるところデジカメは、その延長線上と言ってもいい。

 もっとも、報道カメラマンから見れば「精緻な描写」などは必要ない。たとえばロイター通信は、契約ジャーナリストに対してJPEGでの画像送信を要求している。中には芸術的に加工したRAW画像をよこしてくるジャーナリストもいたようだ。しかし、報道写真に求められているのは「見たものを瞬時に伝える」ことである。わざわざ芸術チックに魅せる必要はない。

 だがもちろん、当初から芸術志向を目指す写真はまた別物だ。

 今回の撮影では、この写真が一番出来がいいと筆者は考えている。モデルの背後にある電柱と、そこから延びる電線が立体感を強調している。

 こちらは奥行きを意識した構図だ。都市景観においては「邪魔なもの」と見なされがちな電線と電柱だが、白黒写真とこれほど相性のいいアイテムもあまりないかもしれない。

 先述の通り、此度の撮影は天候に恵まれなかった。ネオパン 100 ACROSのISO感度は100。これは晴天時の野外で使うべきフィルムと考えていいだろう。従って、光量不足のミスショットも少なくなかった。

 白黒フィルムの濃淡表現の幅広さは、銀塩写真についてあまり知らない人ほど過敏に感じ取れるものなのかもしれない。それだけ、現代人はスマホ撮影の写真ばかりを見てきているということでもあるが。

 そうなのだ。今や右を見ても左を見ても、目に映るのは名もない誰かがスマホで手軽に撮った写真ばかりである。その中で突出したものがInstagramなどのSNSで多くのフォロワーを集めるわけだが、コペルニクス的な考え方をすれば今こそフィルム写真の繊細さ、面白さを伝えるチャンスではないか。

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