DIME MAGAZINE
4.「やる気がないなら帰れ」
言い換え表現「やる気がでないときもあるよな」
「やる気」には次の2つの側面があります。この言い換え表現は、どちらにも有効です。詳しく解説していきます。
1）モラル・タスク
2）モチベーション・タスク
1）モラル・タスクのやる気について
「やる気がないなら帰れ」と怒鳴りたくなるとき、その原因のひとつとして、部下の仕事に臨む不真面目な態度があります。お客様との会議に遅刻してきたり、そのとき、使用する企画書に多くのミスがあったりしたのに、平気な顔をしていて謝りもしない。このようなときに「やる気がないなら帰れ」と言いたくなります。
しかし、このときの「やる気」とは「モチベーション」ではなく、真面目に真剣に仕事に取り組んでいない部下本人の「モラル」の問題です。これが「モラル・タスク」であり、モチベーションとは無関係です。
モラルに問題のある部下の深層心理には、「誰かに認めて欲しい」という極めて強い欲求が隠されていることもあります。その部下が最も恐れているのは無視されることです。無視されるなら、怒られるほうがよいのです。そこで、他人から叱られるようなモラルに反する行動をとるのです。このときに有効なのが、本人の間違いを指摘しつつ、同時に、「やる気がでないときもあるよな」と共感の言葉を投げかけていくことです。
2）モチベーション・タスクのやる気について
一方で、物事を遂行させるのに必要な「心のエネルギー」である「モチベーション」の高低が課題になるケースもあります。上司から見る「やる気がない」は、部下の立場からすると「やる気が出ない」となります。仕事のやる気はあるけれど、出そうと思ってもそのネルギーが出てこないのです。
こうしたモチベーションが低下したときに、「やる気がないなら…」と断定されてしまうと、本人の意思とはくい違った評価を上司がしていることになり、部下との信頼関係を損なうことになります。「何もわかっていない」と、その上司に深く失望する部下もいれば、怒り出す人いるでしょう。信頼はリーダーシップの源泉です。これでは、リーダーシップ力が低下してしまいます。
ここで大切なことは、部下のモチベーションが回復することです。前向きに仕事に取り組む姿を取り戻すことです。そこで、まずやる気が出ない状況を認め「共感」してあげることが必要なのです。
上司であるあなたも「やる気」の出ないときがあると思います。そのとき「やる気がないなら」と言われるより、「やる気が出ないときもあるよな」と共感してもらった方が、心に満ちるものがあるはずです。
これらのことから、「やる気が出ないときもあるよな」は、「モラル・タスク」「モチベーション・タスク」、この双方の「やる気がない」状況を改善する言葉として有効です。「やる気のない」部下にかける言葉の表現はさまざまですが、その根幹に「共感」しようとする心の姿勢があれば、事態はよりよい方向へと向かっていきます。
●言い換えフレーズまとめ
1.「なんで言われた通りのことができないんだ？」
→「私の指示通りではないみたいだけど、私の指示したことで分からない点があったかな？」
2.「そんなことも分からないのか」
→「OK。もう一度、自分で調べてみよう」
3.「何度言ったら分かるんだ！」「何度も同じミスをするな」
→「同じミスを起こさないために、具体策を一緒に考えよう」
4.「やる気がないなら帰れ」
→「やる気が出ないときもあるよな」
取材協力
松山淳氏
リーダー研修講師／心理カウンセラー
産業能率大学 （経営学部/情報マネジメント学部）兼任講師
国際的性格検査MBTI®を活用しながら、経営者、起業家、中間管理職などリーダー層を対象とした個別相談、社員研修、講演などで幅広く活躍。著書に『「上司」という仕事のつとめ方』（実務教育出版）、『真のリーダーに導く７通の手紙』（青春出版社）、『バカと笑われるリーダーが最後に勝つ トリックスター・リーダーシップ』（ソフトバンク新書）、『「機動戦士ガンダム」が教えてくれた新世代リーダーシップ』（SBクリエイティブ）がある。
http://www.earthship-c.com
取材・文／石原亜香利
最新号
