2018年3月に、その確認試験車が披露された〝最高の新幹線〟N700S。その革新の技術を生み出し続けてきた施設が愛知県小牧市にあるのをご存知だろうか。JR東海のテクノロジーのふるさとともいえる、その「小牧 総合技術本部 技術開発部」に大潜入! 普段は絶対に入ることができない研究施設の内部をレポートしよう。
JR東海 総合技術本部 技術開発部は、実際に運行されている車両のメンテや運行に直接的に関わる設備ではなく、次世代の車両技術や既存の建造物の耐久性向上や機能改善を探求する研究実験施設だ。2007年にデビューしたN700系で採用された新技術の数々は、ここ小牧で誕生したものがほとんどだ。研究実験施設ということでセキュリティも最高峰。報道陣に公開される機会もまずない。しかし今回、N700Sが登場したことを背景にJR東海が誇る技術力の源の一部が公開された。様々な鉄道施設を取材してきた、私ムラカミも初めての経験!
さてJR東海における鉄道の研究開発サイクルをまず紹介しよう。JR東海では
1:実際のフィールドにおける現象の把握
2:理論解析とシミュレーション
3:試験装置による検証
という3つのプロセスを組み合わせながら技術開発を行っている。1はN700A試験車両(X0編成)や本線設備に試験部品を組み込んだ実地試験が行なわれており、実際のデータを取得するのが目的。そのほかの2、3の項目について大きな役割を持つのがこの小牧の研究施設となる。
小牧の研究施設の最大の特徴は9つの大型試験装置を備えている点だ。この訓練施設を使用することで限りなく実際の状況に近い状態でシミュレーションや実験を行うことが可能になる。今回はこの中から4つの施設の見学をすることができた!
1:架線振動試験装置
電車の動力となる「電気」。これを供給する架線は列車、特に新幹線が通過する際には大きな振動が発生する。しかもただ振動するだけでなく、架線は大きな力で引っ張られ、その張りが保たれている。その条件下で架線を支える部材などの試験を行なうのがこの試験装置だ。解説に当たる技術開発部の小西さんは、
「実際の張力と列車通過時の振動を継続して調査することで、新しい技術を探索しています。現在東海道新幹線では架線の磨耗などの異常を検知する『警報線付きトロリー線』というものを使用しています。これは、トロリー線(架線)中にメタル線を入れることによって、異常を検知するメカニズムです。ただ、列車が走る営業中は電流によるノイズのため異常が検知できません。そこでこのメタル線を光ファイバーに変え、常時監視できる新技術を今開発しています」
と語る。この警報線付きトロリー線は東海道新幹線のみで採用されている技術で、その理由を聞くと「高速車両がここまで高頻度で走行する状況が東海道新幹線しかないため」と付け加えた。またこの施設の他に実際にパンタグラフを装着した試験走行台車を走らせて架線の状況を試験できる全長600mの「電車線試験装置」もある。
左が現行のメタル線タイプ、右が開発中の光ファイバータイプ。この線たちが支障されることで異常を検知する。