■ICUから一般病棟へ
術後の目覚めはかなりおぼろげだ。記録を確認しても、「半覚醒」(声かけに反応するが目は開かない)と「全覚醒」(声かけに反応し目も開ける)を繰り返す。
17時頃になり「ほぼ明瞭」と「傾眠」を繰り返しつつも、自分が手術を受けICUに居ることは理解していた。が、まだ人工呼吸器に繋がれているので身動きは取れない。23時頃、ようやく抜管となり自発呼吸に切り替わった。
ただし、首や腕の点滴、お腹には2本のドレーン、尿カテーテルなど、体には多数の管が繋げられている。これらは時間と共に外され、立ち上がることを許されたのはICUを出た術後2日目から。
■体力を戻すにはリハビリあるのみ
一般病棟に戻ると、あとは退院に向けてのリハビリが中心だ。毎日担当看護師に付き添われ、
150mを2分で歩行
階段昇降40段を40秒
300mを3分で歩行
階段昇降80段を80秒
などが続く。胸を切り開いたにしては結構スパルタだ。
切り開いた胸の状態は、クッキリと線が残り赤い。痛みは体をひねったり咳・くしゃみをした時にズキンとくる程度。気になるのは、トイレなど壁に囲まれた個室に入ると、機械弁の「カチ・カチ」という音が聞こえること。慣れるまで辛抱するしかない。
退院の目安は、体力回復と術後から始まっている抗凝血薬(ワーファリン)の効き具合の安定だ。機械弁を装着した場合、ワーファリンは基本的に毎日1回、一生涯服用しなければならず、指標となる検査値(血液凝固の働きを見る検査=PT-INR)は大動脈弁の場合2.0~3.0といわれている。*現在は2.0前後とガイドラインも変わりつつある。
筆者はその数値を維持するため5錠(mg)/日でほぼ安定し、退院することができた。その際に支払った医療費は、総額10万円程度。
*現在は更生医療の制度が変わったため、もう少し高くなると思われます。