最後に洗面台とトイレも紹介しよう。実はここにも隠れた気遣いと省エネがある。洗面台には人感センサーが備えられており、人が立つと鏡台脇の明かりの輝度が上がるようになっている。またトイレも航空機のトイレのようにカギを閉めるまではやや明かりが暗い状態で施錠すると残りの明かりがつく設計。これは省エネだけでなく、万が一の施錠忘れを防ぐ狙いもある。そしてトイレはもちろん全部洋式、さらには自動開閉機能付きの温水洗浄暖房便座を完備! 11号車には車イスとオストメイト対応設備を持つ多機能トイレもある。
駆動システムも小型・軽量化がなされ、省エネ性能も向上。小型・軽量化されたことにより「全席コンセントの設置などが可能になった」(上野副本部長)。また、空いたスペースを利用して新幹線車両では初めて小型・大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載。これまで、異常時の停電の際に使用できなかったトイレが一部の号車で使用できるようになっている。さらに長大トンネル内や橋りょう上といった避難困難な箇所に緊急停止した際に、安全な場所までバッテリーによる自力走行の実現も目指すとのこと。
N700Sの営業開始は2020年度を予定しているが、そこから7年後にはリニア中央新幹線が開業する見込みだ。そうなると実質的にN700SはJR東海の新幹線における集大成といえるかもしれない。上野副本部長も「安全性、快適性とも今の技術のすべてを注いだ」と繰り返し語る。利用客の視点により寄り添ったN700Sは今後、走行試験を繰り返し営業運転へ備えていく。
取材・文・撮影/村上悠太