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何もないのに移住や開業を目指す人が集まる北海道当麻町の秘密

2018.04.11

■開業資金を半分補助。子育て支援も充実

 最強ダウンを作り上げたMOONLOIDは、もともと旭川市で立ち上げられたのだが、2017年10月より当麻町に移転した。アパレルを扱うショップであれば旭川市のほうがイメージに合っている気がするが、なぜわざわざ隣の小さな町へ?

「MOONLOIDでは『ナンガホワイトレーベル』ほかオリジナル商品を開発しています。北海道発信のブランドを作るにあたり、より北海道らしい場所に店を構えたいと考えたため当麻町に決めました。何もないけれど何でもある北海道。当麻町は雪原や美しい森、川があり、大雪山が美しい。北海道をイメージできる風景がそろっていると思います。それに、当麻町の移住支援もきっかけのひとつです」(甲斐さん)

MOONLOIDの建物は、北海道大学の製材工場という歴史的建物を移築しており、このサポートをしてくれたのが当麻町だ。合掌造りの味わいのある建物で、店に入ると薪ストーブが出迎えてくれる。

 当麻町では、町内で起業するひとのために、開業にまつわる経費の半分(上限300万円)を補助するという制度「とうまのお店元気事業」がスタートしており、MOONLOIDはこの制度を利用。

 補助金だけでなく、林業の盛んな当麻町では、店舗を新築する場合は木材を最大100万円分まで補助しているのだが「歴史的建物を移築するなら支援したい」と町長が判断。新たに「歴史的建物木材活用補助金」(最大200万円)がうまれたという。志を持った経営者のために町がフットワーク軽く対応してくれるという非常に相談しやすい環境のおかげもあり、2017年には4店が町内で起業した。

 町民への支援もユニークだ。まず、子どもの修学旅行費と医療費が無料。15歳までは子どもの誕生日に町から本をプレゼント。さらに1歳の子どもには町長が直接絵本を届けにやってくるという。そして、住宅新築時には最大250万円分の木材を支給。250万円分の木材といってもピンとこないが、二世帯住宅をゆうに建築できるほどの木材の量だ。

 これら起業後の生活支援も充実させることで、転出超過・破綻寸前だった町が、ついに全国でも珍しい”転入超過“を記録するに至った。

「ずっと住んでいて、当麻町は何もない町だと考えていました。けれど、山があって、川があって、おいしい米と日本酒があって、冬は雪原があります。たとえば、予算0でも、何もない雪原を遊び場とすれば大盛り上がりのイベントになりました。そんな逆転の発想をしたところ、挑戦する空気にあふれ、ユニークでエネルギッシュな人が集まってきたんです」(当麻町役場 まちづくり推進課 村椿哲朗さん)

 エリアの特色を生かした起業支援制度を用意する地方自治体は全国にあるが、当麻町は飛び抜けて柔軟性がある。通常、支援を受けるには細かな条件を満たす必要があり、そこで挫折する人も。柔軟な対応であれば相談しやすく、起業への第一歩を踏み出せる。

 今や通信環境が整っていれば小さな街からでも、MOONLOIDのように日本全国を相手に商売ができる。世界への挑戦も無理ではない。

 一方、町は起業支援の出費はあるが、町に活気が出る。

 第2のMOONLOIDが生まれるか、そして、柔軟な支援によって地域活性の成功モデルとして定着するか。今後が楽しみな町だ。

文/大森弘恵

■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!

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