■八王子以西からE351系の本領を発揮するものの……
定刻通り正午に発車。八王子まで振子を作動せず、のんびり走っているように映る。東京―八王子間は列車の運転本数が多い過密ダイヤであること、三鷹から先は複々線から複線に変わるため、スピードはあがらない。
八王子を発車すると、列車の運転本数が少なくなることもあり、ようやく本領発揮。E351系は最高速度130km/hのほか、曲線半径200メートル以上では「所定の速度+25km/h」の走行が可能だ。しかし、“振子車両ならでは”の制約で、車両の低重心化と車体の断面を絞り込まなければならず、車内空間が狭い。
それを象徴するのは窓框(かまち)。振子なしの車両は、ペットボトルなどを楽に置けるが、E351系はボールペンをのせられるのがやっと。このため、JR東日本は窓側に小さいテーブルを設けた。
乗り心地については、「いい」とはいえない。国鉄時代に開発された381系で課題となってしまった、振子車両特有の乗りもの酔いが解消されていないのだ。この日、ある車両の乗降用ドア付近で、たまらず嘔吐した乗客がいた。試しに数分立ち続けると頭がクラクラするので、常に車内をまわる乗務員や車内販売員にとっては、過酷な環境だと思う。
このほか、三鷹通過後のポイント(分岐器)走行時と、塩嶺トンネルを抜けた直後、激しい揺れを感じた。
参考までに、東海道・山陽新幹線用のN700系16両車は、台車の空気バネを膨張させることで、曲線通過速度向上を可能にした「車体傾斜システム」を採用。車体傾斜はわずか1度と小さく、乗りもの酔いもないほか、振子車両よりも快適に過ごせる。E353系もこの方式(最大1.5度傾斜)なので、機会があったら乗ってみたい。
■E351系はビジネスよりも観光や行楽向けの車両
座席の坐り心地をチェックすると、普通車はグループや家族連れの乗車を想定したのか、テーブルはインアーム式。向かい合わせにしても、弁当などが置けるようにした。メモをとる分には充分使えるが、ノートパソコンが使いづらそう。無論、どの席にもコンセントがない。
坐り心地に関しては申し分なく、乗りもの酔いにあわなければ快適に過ごせる。
E351系のグリーン車。背もたれの枕は固定式で、上下に動かすことはできない。
一方、グリーン車は後日〈中央ライナー7号〉八王子行きで利用した。普通車と同じ2人掛け(一部を除く)で、背もたれも高く、一部の車両は背面にもテーブルが設置されたので使いやすい。ひじかけにシートヒーターのスイッチがあり、寒い季節にうってつけの設備。試しに使ってみると、座面の下から微量の温風が乗客をもてなす。
しかし、普通車との差が小さく、“凄味”がない。E351系に乗るなら、特急〈スーパーあずさ〉は普通車、〈中央ライナー7・2号〉はグリーン車(720円)をオススメしたい。