イタリアやフランスに旅行した方なら、お店の共用トイレや公衆トイレに便座がなくてびっくりという経験があるだろう。ヨーロッパの一部の国で便座がないのは、盗難・損壊防止のためだが、中腰で用を足す辛さは、海外旅行の楽しさをトーンダウンさせてしまう。
ならば、と旅先に持っていける携帯便座『イケベン』を開発したのが、アスタリスクの池邉康子さんだ。
池邉さんは、『イケベン』を開発に至った経緯をこのように語る。
「2015年夏のイタリア旅行の準備中に『イタリアには便座がないらしい』と聞き、携帯便座はないかとネットで検索しまくりました。しかし出てくるのは『子供用補助便座』ばかりで携帯便座を見つけることはできませんでした。
そこで、自分で携帯便座を何個か作り、それを持ってイタリアに行きました。イタリアでは便座がない便器があるたびに、家族全員(体重48kg~88kgの4名)で試験してもらったので観光どころではありません。便器の写真ばかり撮っていました。
帰国後、改良を加えてほぼ現在の形にし、2016の年末年始にイケベン商品化を見据えた試験のために、もう一度家族でイタリアに行きました。
そこで娘たちから「イケベンがあってよかった」と絶賛された事件がありました。帰国の際、イタリアに大寒波が来て空港で約12時間足止めされたのです。
空港の便器も便座がなかったのですが、イケベンのおかげで、座位がとれるし、冷たくないし本当に助かりました」
そうして商品化に至った『イケベン』だが、外観はまさに便座そのもの。
素材はポリエステルだが、そのままだと薄いので4か所にスポンジが入っている。これが便座のない便器に腰掛けられるよう、厚みとクッションの役割を果たしている。