■気象用語の「数年に一度」は?
では、気象情報で使われている「数年に一度」についてはどうでしょう。気象庁のサイトには天気予報などで用いられる用語の解説ページがあり、時に関する用語で「数日」の説明がありました。「数日」は「4~5日程度の期間」で、備考に「できるだけ具体的な期間を用いる」ともあります。これを「数年」に当てはめると「4~5年程度の期間」。「数年に一度」は「4~5年程度に一度」ということになりますが、天気予報で使うときに、厳密にその基準を守っているのでしょうか。
気象庁の天気相談所に聞いてみたところ、天気予報などで使われる「数年に一度」も厳密な基準はないそうです。気象情報でこの表現が使われるようになったのは平成12年(2000年)頃から。一般の人にその事象がまれなことを理解してもらうため、記者の人たちと言い方についてやり取りしていた中で出てきた表現なのだそうです。なお、テレビなどで天気予報を伝える気象予報士たちも、自ら調べた気象データから、視聴者に伝わるように自分なりに工夫して話しているそうですよ。
ただ、気象災害や水害など、重大な災害が起こる恐れがある場合に気象庁が発表する「特別警報」には、「50年に1度の値以上」になった場合という基準があります。確率的な手法で計算して導き出された数字ですが、この基準を超えたからといって、必ず特別警報が出る、もしくはこの基準に届かないから特別警報が出ないということではありません。特別警報が出るときというのは、数十年に1度という、1人の人が今まで体験したことがないほど極めてまれで、異常な事態ということ。特別警報が出る前から周りの状況を自分なりに注意し、早めに避難を済ませておくことが必要です。
なお、「数年に一度」が「毎年じゃねーか」と思うことに関しては、「数年に1度」の雨や雪が「いろんな地域で」降っているから多く感じる面もあるかもしれません。「日本で」降っているわけではないのです。最近は観測がきめ細やかにされているので、数年に一度の大雨や大雪を観測する場所が多くなっているといえるでしょう。それぞれの地域での「数年に一度」を、ネットやテレビで何度も見聞きしているために、「またか」と思ってしまうのではないでしょうか。
頻発しているように感じる「数年に一度」の気象ですが、その地域にとっては珍しいことに違いありません。聞き慣れすぎて油断しないように気をつけたいものです。
取材・文/房野麻子(S)