■男性が働きやすい社会=女性が働きやすい社会
日本・韓国・ミクロネシア地区にあるホテル16軒の人事責任者を束ねる立場からは、日本の女性活躍推進の取り組みはどのように見えるのだろうか? 麻生氏は、”男性の働きやすさ”も改善することが必須だと指摘する。
「やはり、結局男女一緒に長時間労働問題を改善しなければならないと思います。女性だけの働き方を改善しても駄目。また、労働時間ではなく結果・過程で図るカルチャーが必要。そのために、最先端のIT技術などもどんどん取り入れていくべきです。
”女性/男性はこういうもの”という考えはなくして、もっと個人のレベルでできることできないことに対応していくことが大切。
先日の『ウーマン・リーダーシップ・カンファレンス』では、ある女性管理職から面白い意見が出ました。その女性は、ヒルトン小田原のファイナンス・ダイレクターで、大学生の息子がいます。”もしキャリアをやり直せるとしたら?”という質問を受けて彼女が出した答えは、”夫への教育”でした。つまり、女性だけが頑張るのではなく、相棒の男性も(家事・育児を)頑張らないといけない。そのためには、男性が働きやすい職場環境も作らないといけません。
私自身も、家事を率先してやるようにしています。その姿を見て育ったので、大学生の息子は家事をいやがりません。また、同じく大学生の娘も結婚後もずっと働きたいと言っています。
”女性のための”ばかりだと、男性側からどうしても不満が出てくる。女性だけではなく男性にも優しい職場環境を作ることで、最終的に女性の働きやすさに還元されるのではないでしょうか。そして、そのような会社こそが、これからは長期的に成長し続けることができる。私自身、今後もそこに注力していきたいと思っています」
【取材協力】
麻生周治(あそう・しゅうじ)・・・ヒルトン日本・韓国・ミクロネシア地区人事業務統括本部長。大学卒業後、1988年にヒルトン東京ベイに入社。日本国内外にあるヒルトン傘下ホテルのオペレーション部門や人事担当としての経験を積み、2007年10月にヒルトンの東京リージョナルオフィスに異動。日本・韓国・ミクロネシア地区の人事業務統括本部長として、人事戦略の企画や政策の運営、幹部候補者のリクルーティングなどを指揮する。ホテル運営の現場で20年以上働いた経験をフルに活かし、同地区内の4,700人を超えるチームメンバーの更なるキャリアアップと全ホテルブランドのサービス向上のための教育に力を注ぐ。
文/吉野潤子