2016年4月に女性活躍推進法が施行されてから、もうすぐ2年が経とうとしている。世界経済フォーラム(WEF)が昨年発表した2017年「ジェンダー・ギャップ指数」ランキングでは、日本の順位は144カ国中114位。前年の111位よりさらに3つ順位を落とした。国を挙げて”女性の活躍できる社会”を目指しているが、なかなか進まないのが現状だ。それどころか、実際には「出世したくない」「むしろ専業主婦になりたい」という女性の声も少なくない。
そんな中で、野心的で能力の高い日本人女性を惹きつけて成果を上げているのが米ホテル大手ヒルトンによる日本独自のエリート人材育成プログラム「RJET(アールジェット=リージョナル・ジャパニーズ・エレベーター・トレーニー)」だ。特徴は、最短で管理職になるための極めて明確な基準を設定していること。
その他にも、ヒルトンでは現在ダイバーシティ推進に向けて様々な取り組みを行っている。ヒルトン日本・韓国・ミクロネシア地区人事業務統括本部長の麻生周治氏に、その詳細を伺った。
■明確な基準で出世意欲の高い日本人女性を惹きつけるヒルトンジャパンの”RJET”
2010年から導入された「RJET」では、一般採用とは別枠の独自アセスメント手法で選りすぐりの幹部候補生を採用する。2年間の厳しい研修で一流のホテリエとして集中的に鍛え上げ、修了後は”スーパーバイザー”または”副部門長”と呼ばれる管理職からスタートする。そして最終的には、10〜15年間かけて総支配人を目指す。
日本のヒルトングループのホテルでは、現在女性の総支配人は1名のみ。将来的に女性の総支配人比率を上げるための取り組みを積極的に行っている。「RJET」合格者も、77%が女性だ。
バリバリ働きながら出産・育児を両立したいと願う女性にとって、「頑張ったら、いつかは出世できるかもしれない」という曖昧な制度ではキャリアプランを描きにくい。その点、難関だが昇進の基準が明確な「RJET」は、日本にも確実に存在している野心的で優秀な多くの女性たちを惹きつけているのではないかと麻生氏は分析した。
「ホテル業界を希望してくる新入社員の80%は女性です。この4月にヒルトンに入社する新入社員120名のうち、100名が女性。その全員が総支配人になりたいわけではありません。しかし、RJET生は別です。皆、とても積極的で出世意欲が強い。海外でマネージャーとして活躍しているRJET卒業生は3名いますが、その中の1名は女性。ミャンマーで2つのホテルのセールスマネージャーに就いています。
彼女らがRJETを選んだ理由は、とにかく早くマネージャーになりたいから。もともと商社や航空会社、メーカーなどの総合職を目指していたのですが、『ヒルトンのRJETなら確実に管理職からスタートできる』ということで集まってきた。
日本社会全体では昇進したい女性はまだまだ少ないと言われていますが、確実に一定数存在しているのです。RJETでは初日にヒルトン日本・韓国・ミクロネシアのトップ(運営最高責任者)との朝食会が開かれるのですが、CEOに対しても、皆臆することなくどんどん話しかけていますね」