原作は45年前の作品。
根底に流れるコンセプトは力強い名作だが、表面の絵柄や風俗はどうしても古びてしまう。
『デビルマン』を換骨奪胎し、現代的アプローチでリブートしたものが『DEVILMAN crybaby』なんだ。
個人的に最もグッときたところは、ストーリー展開。
実は原作、打ち切り漫画。
ゆえに後半の展開は、怒涛かつスピーディー、なおかつ異常な情報量が読者を襲う。
神々、神話、聖書への知識がある前提で話が進む。ソコが今までのマンガにないクレイジーな魅力へと繋がった。しかし、同時に全てを理解できない一因にも。端的に言ってしまえば、一般読者が追いついていくには難儀な世界観なんだ。
(C)Go Nagai-Devilman Crybaby Project
僕も読了後に映画評論家・町山智浩氏の解説を聞き、やっと全容が分かった。
『DEVILMAN crybaby』は、全10話というメリットを生かし、丁寧に描き切る。1周しただけで、ストーリーの全容が理解できる内容に仕上げていた。
「そうそう、求めてたのソレ!」
原作の雰囲気を壊さず、なおかつ親切な物語進行。デーモンと人間との対比構造が、これほどか! と描かれる。
原作ファンも新規も満足する奇跡のようなバランス。
また、長尺をつかって描かれるヒロイン・牧村美樹が良い。
原作ではクラスの人気者だったが、『DEVILMAN crybaby』ではインフルエンサー。Instagramの使い方が上手なカリスマ女子高生となっている。
陸上女子の一面も持ち、スレンダーな四肢を持ち、腹筋萌えな造形美もたまらない。しかも、性格まで完璧な美少女。
(C)Go Nagai-Devilman Crybaby Project
視聴者の美樹ちゃん好感度を爆上げしたのちの、例のアレ…。
「湯浅政明監督、アンタがデーモンだよ! (褒め言葉)」と叫びたくなったよね。
作品に込められたメッセージ性も強い。貧困、格差社会、差別、フェイクニュースと現代が持つ病理も抉り出す。
そして、誰もが原作に描かれるテーマの普遍性に気づくだろう。みんなが見たほうが良い!
ということで、ここ最近は『デビルマン』がマイブーム。原作漫画も再び読了。
「ほかにデビルマンないか!」と飢えていたなか、発見したのが映画版『デビルマン』。
『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズでヒットメーカーとなった那須博之監督作。
鑑賞後、こう思った。
「ちょっと、すごいモノを見てしまった…」
文/ヨシムラヒロム
イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使
■連載/ヨシムラヒロムの勝手に宣伝部長