2位の福井県は「越前ものづくりの里プロジェクト」を推進し、多数の伝統工芸品のブランド力を高めている。刃物もそのひとつで、「越前打刃物のグローバル化推進による海外販売戦略構築事業」は、経済産業省が中小企業の海外展開を後押しする「JAPAN育成支援事業」の補助金交付先にも選定されている。中でも、越前市の龍泉刃物には1本2万2630円(税抜き)と高額ながら、43ヵ月待ちのステーキナイフが。ダマスカス鋼の美しい波模様が特徴で、軽く引くだけで材料を崩さずに切れ、料理の味を引き立てると高い評価を得ている。
3位の新潟県は同じく工業統計調査によると、食卓用ナイフ・フォーク・スプーンの出荷額シェアは約96%。江戸時代初期から始まった金属加工の技術に加え、明治時代に西洋の技術をいち早く導入、大正時代には金属食器を作り始めていた。「包丁界のロールスロイス」と呼ばれるオールステンレスの「グローバル」包丁を世界で初めて生み出した吉田金属工業(燕市)や、パンを切ってもパンくずが出ない、切り口がなめらかでバターがキレイに塗れると評判の、2年待ちともいわれるパン切り包丁を開発した庖丁工房タダフサ(三条市)がある。
刃物製造・卸が減少している背景には、一般家庭での包丁離れがあるようだ。包丁とまな板を持っていないという人も増えており、手頃な価格の外食産業が増えた、スーパーでの総菜の種類が増えた、カット野菜も種類や切り方が豊富になって選べるようになったことなど、包丁無しでも困らない状況になっているからだろう。実際、野菜を洗って切るのが面倒、肉や魚を切った後にまな板や包丁を洗う手間がいやなどという声も増えている。では、増えてきた外食産業でプロ用の包丁が増加しているかというと、これもセントラルキッチン方式で作られた料理を店舗で温めて盛りつけるだけという形態が多いため、そこに包丁の需要はない。また、不況により包丁を使いこなす料亭などの閉店が相次いでいることなどが、プロ用さえも減少させている原因となっている。
そんな中、明るい情報を提供してくれているのが輸出で、岐阜県関市がまとめた貿易統計では刃物類の輸出額は緩やかながらも順調な伸びを見せている。特に、2014年度の包丁は前年比116.6%と、大きく増加。輸出先も北米、アジア、ヨーロッパ、中東と広がりを見せている。
文/編集部