■筋力の維持・増強
筋肉に含まれるたんぱく質は、常に分解と合成を繰り返しており、たんぱく質の摂取が減ったり運動量が低下すると、分解が合成を上回り筋量は落ち始める。ビタミンDは、筋肉のたんぱく質合成を促進し、その減少を防ぐ働きがある。
ちなみに、イギリスのサッカー選手らに8週間にわたりビタミンDを摂取してもらってから、バックスクワットを行った実験では、摂取したグループと摂取していないグループとでは持ち上げられる重量に大きな差(6kg)があったという。
このほか、ビタミンDには高血圧を下げる作用や花粉症の軽快など、多くのメリットがあることが判明しているが、それが日光浴とどう関係するのだろうか?
実は、ビタミンDは太陽光(正確には紫外線のUVB)を受けることで、体内で合成される。もう少し詳しく言えば、UVBが皮膚に当たると、皮下に広く分布する7-デヒドロコレステロールがビタミンDの前駆体に変わり、それは体温でビタミンDへとまた変わる。そして、リンパ管を介して血管網へ入り、全身に送られる。
もちろん、ビタミンDは食べ物やサプリからでも摂取できるが、ビタミンDを含有する食べ物は魚類・キノコ類などに限られ、摂りすぎのリスクもあるため、斎藤医師は日光浴を柱とすることをすすめている。
■ビタミンD合成に効果的な日光浴の方法
斎藤医師がすすめる日光浴の方法は、1日のうちで最もUVB量が多い、正午をはさんだ前後2時間(10~14時)の時間帯に、20分ほど外を散歩するなりして日の光を浴びるというもの。
ただし、UVBは窓ガラスをほとんど通過しないので、外出するか窓を開放する必要がある。閉め切ったオフィスで終日勤務する弁当派の人は、意識して外に出る必要があるので注意したい。
夏場は、日焼けや光老化を気にして、日焼け止めをあちこちに塗りたくなるが、「シミやシワが気になる顔面以外に日焼け止めを塗ることはおすすめできません」と斎藤医師。日焼け止めを塗った箇所はビタミンDを合成できなくなるので塗布は顔だけにとどめ、そして顔の面積の分だけ、別の箇所で肌の露出を増やすようにすべきだとも。
■気象条件や住んでいる地域にも留意
斎藤医師は、UVB量は、天気、季節、地域によって減少するので注意が必要だという。例えば、くもり空ではUVB量は(晴天時に比べ)2~4割減る。太陽の入射角度が小さくなる冬季だと、北海道や青森県北部では「皮下でのビタミンDの合成がほとんど期待できない」レベルまで落ち、本州でもそこまでいかないとはいえUVB量は不足しがち。
その対策については、「ビタミンDの多い魚類などを食べ、必要ならサプリメントを有効活用してください」とアドバイスしている。
「1日1回の日光浴」―たった、これだけでビタミンDによる様々な恩恵を得られるのだから安いもの。仕事の都合で毎日は無理という方でも、これからは意識的に昼時は軽く散歩するようにしてみるとよいだろう。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)