醤油は日本人の絶対的必須アイテムである。それでいて、地域による味の好みが異なり、九州や四国は甘みたっぷり、関西は薄口、関東は濃口などに分かれる。だから、ふと立ち寄った旅先のスーパーマーケットで出会う醤油売り場はまさにパラダイス! 初めて見る醤油だらけなんてことも珍しくない。
その地で人気を誇る醤油の存在も面白い。たくさんの選択肢があるだろうに、なぜこの醤油なのか。つい探ってみたくなるのだった。
■これぞ山形の味
そんな醤油のひとつが、山形で絶大なる人気を誇る「味マルジュウ」だ。と書くとスルドイ人から突っ込みが入りそうなので先に断っておくと、正式名称は「しょうゆ」ではなく「しょうゆ風調味料」。ダシ入り醤油である。
しかし、山形で醤油といえば味マルジュウというほどメジャーな存在であり、県内どこのスーパーマーケットでも売り場の主役。それもどーんと1.8リットル入りが並ぶほど、よく売れている。
その証拠に、多くの山形県人が「味マルジュウは山形の味」と胸を張る。
・山形名物の芋煮の味付けに欠かせない
・そのまま割ったらそばつゆになる
・刺身に使ってもおいしい
など、とにかく何にでも合うと大絶賛。なぜこんなに人気が高いのか。製造元の丸十大屋を訪ねてみた。
■50年以上前に生き残りをかけて売り出した
「発売を開始したのは、今から50年以上前の昭和39年です。当時、同業者がたくさんあり、どうしても安売り合戦になってしまう中、なんとか市場にないもので生き残りをはかろうと、醤油にだしを入れて作ったのが味マルジュウなのです」
とは、同社代表取締役の佐藤知彰さん。
これ1本で煮炊きができます。希釈すればめんつゆにもなりますと発売した。が、すぐに人気は出ず、20年ほどの月日の中で「普通の醤油としても使える」、「刺身もこれで食べたほうが美味しいじゃないか」の声がゆっくり広まり、ようやく認知された商品だという。
その後、だしメーカーや大手醤油メーカーがこの分野に参入してきたことで、立場が危うくなると思いきや、どのメーカーの商品も「めんつゆ」の分類で参入してきた。一方の味マルジュウは前述の通り「しょうゆ風調味料」ということで「つけ」や「かけ」で使えることで違いが出たのも生き残った原因のひとつだ。