■Introduction
ラズパイユーザーの悩みと言えばケースをどうするかである。私も現在アルミケースを使っているが拡張ボードは裸の状態である。この拡張ボードがやっかいで、各メーカーが自由に作っているため、どれにでも合うケースを作るのが難しい。人気DACボード専用ケースもあるが、その対応機種は極めて少ない。
そんな悩みを解決するのがバリュートレードから発売されたAVIOT『CASE 01』である。ヘッドフォン祭などで何度か参考展示されていたが、2017年10月に製品化され、1万6070円(税込)で発売中。さらに3種類の交換パネルも各1058円(税込)で入手できる。筐体はアルミ削り出しで最厚部3mm、重さ約170gの重量級。艶消しブラックのアルマイト仕上げを採用する。ようやく海上忍氏の努力が実ったわけだ。早速、そのケースの実力を検証してみよう。
■Impression
試聴にはHiFiBerry DAC Plusの互換ボードを使った。さらにHiFiBerry『Digi+ Pro』とSONOMA『model One』の組み合わせも使用した。最初にラズパイと拡張ボードを裸の状態で聴いてみる。手嶌葵「明日への手紙(ドラマバージョン)」(96kHz/24bit)のボーカルがかすれた感じで、ザワザワしてノイズっぽい。Yuji Ohno & Lupintic Five with Friends「BUONO!! BUONO!!/THEME FROM LUPIN III 2015~ITALIAN BLUE ver」(48kHz/24bit)は中低域に厚みがあってウォームな音色だった。
ケースには入れずに銅板だけを挟んでみる。明日への手紙ではS/N感が圧倒的に向上した。さらに解像度も高まって、今まで聞こえなかった細かい音が出る。この銅板だけ欲しい。LUPINもS/N感が向上して音の輪郭がハッキリするがボーカルよりも音の変化は少なかった。宇多田ヒカル「Fantôme/道」(96kHz/24bit)ではボーカルに厚みが出て、低域の重心が下がって音楽全体が安定した。
今度はケースに収めて、天板とゴム足を付けない状態で試聴。明日への手紙は、さらにS/N感が良くなりニュアンスがより分かるようになった。Fantôme/道では、ボーカルの厚みがさらに増して全てが力強くなった。最後に天板とゴム足を付けてケースを完成させる。交換パネルは外してある。明日への手紙は繊細さに加えて華やかな感じが出た。LUPINではウッドベースの響きが豊かになった。重心も下がってピラミッドバランスになった。正直言って、このケース、ラズパイ3よりもかなり高価なので購入がためらわれるが、音質向上効果は大きい。特に銅製シールドが効果抜群である。HiFiBerry DIGI Plus、SabreBerry 32、Terra-Berry DAC2の3種類のボードを使う場合は、交換パネルを購入すればケースにピッタリ収まる。また、私のように交換パネルを外したまま使えば、対応外のボードも使用可能だ。この状態でも裸基板よりずっと音質は向上する。ラズパイの音を確実に良くしたい人にオススメだ。
ライバルは『NM-RP3』+『NR-1』である。こちらも合計1万2700円(税込)とかなり高価であり、さらにRCA端子などをハンダ付けする必要があり難易度はやや高い。敷居が低いのは拡張ボードが限定されるが、AVIOT『CASE 01』と言える。