1万種を超えるといわれる日本酒の銘柄。その中には、ウケねらいにでも振り切ったかのように思える、ユーモア感あるネーミングもちらほらあって、日本酒通を楽しませている。
そういった銘柄から、特に印象が強く味わいも優れた逸品を、酒ジャーナリストの葉石かおり氏にピックアップしていただいた。
●『I LOVE SUSHI』(天吹酒造)
元禄年間創業の300年の歴史をもつ蔵元が、地元佐賀平野の酒米と脊振山系の伏流水で作り上げた酒で、銘柄が示すとおり、寿司の旨みをうまく引き出すコクが特徴。価格は一升瓶(1800ml)が、税込み2757円。
葉石氏「魚介類の旨味と、ぴたっと同調するほど良い旨味、酢飯に合う上品な酸味、脂をきれいに流すバツグンのキレが秀逸です。鮨と一緒にいただくと、口の中での一体感が倍増し、お酒も鮨もどちらもすすみます。市販の鮨でもこのお酒と一緒にいただくとレベルがグンとアップしますよ」
●『川口納豆』(川口納豆)
国内の9割の商品が外国産の大豆を使うなか、国産大豆のみの納豆づくりにこだわる納豆メーカーの有限会社川口納豆がプロデュースしたのが、清酒『川口納豆』。同社が栽培した酒米「美山錦」を、金の井酒造で醸造して誕生した(もちろん納豆が原料ではない―念のため)。価格は一升瓶(1800ml)が、税込み3240円。
葉石氏「緻密な味の層、ほど良く練れた旨味が舌を包み込みます。派手さはありませんが、穏やかで、非常に落ち着いた酒質で、飲んでいて疲れません。それでいてしっかり飲みごたえもあるので、ビギナーから酒通の方まで全て満足させてくれる一本です」