建築家の黒川紀章が設計した、日本初のカプセルホテルが大阪にできたのは1979年。以来、カプセルホテルは日本の大都市圏で続々と建てられ、今では女性専用の施設まで出るほどポピュラーなものとなっている。
日本人にはさほど抵抗感のないカプセルホテルは、長い間海外の人たちには受け入れられてこなかった。「まるで死体安置所みたいだ」というのが、彼らの共通認識であったのである。
潮目が変わったのは、ほんの5~6年前。訪日外国人が増加するなか、節約志向の若いバックパッカーたちがリーズナブルなカプセルホテルを使い始め、帰国してからSNSでその経験を拡散し始めるようになって、認識が変わり始めた。Tripadvisorのような大手口コミサイトには、カプセルホテル体験者のレビューが何百と綴られているが、集約すると「なかなかクールで快適」という好意的な意見が主である。
イギリス人トラベルライターのベッキー・エンライトは、京都の旅館に泊まった翌日に、ものは試しとカプセルホテルに泊まったときの印象を、「ぱっと見では素っ気なさと威圧感がありましたが、ミステリアスで未来的な感じに惹かれました。自分の部屋には、宇宙船の与圧室のようなプラスチックの扉がついていました。内部も宇宙時代的な最新式の設備があると思っていましたが、そうではなかったのは意外でした」と話す。彼女にかぎらず、カプセルホテルを「ハイテクニッポンを象徴する近未来SF的な施設。訪日したら1回は記念に泊まるべし」と表現する外国人は非常に多い。われわれ日本人の観念とずいぶん違っているが、ともかく「死体安置所」と揶揄する人はもうほとんどいない。
カプセルホテルに関するもう1つのトレンドは、海外のホテル業者が自国にカプセルホテルを建て始めたことである。2011年に西安で、中国初のカプセルホテルが建てられたのが割と大きなニュースになったが、ここ2~3年の間でも世界各地のローカルメディアが「我が国初のカプセルホテル」というヘッドラインのニュースを報じている。
今回は、続々とオープンしている海外カプセルホテルの中から、筆者がチョイスした5つのカプセルホテルを紹介したい。
●M Boutique Hostel(Mブティック・ホステル)
バリ島のスミニャック地区に最近できたカプセルホテル。「なにも南国リゾート地にカプセルホテルなんて…」と思わないでもないが、リピーターや長期滞在者の予約でいつも埋まっているという。ビーチからやや遠いのが難だが、プールを併設しており、また飲食店街や寺院のような観光スポットに比較的近い。1人1泊125,000ルピア(約1,000円)と、バリ島の高級ホテルに比べれば信じられないほど安い。
●Hey Bear Capsule Hotel(ヘイベア・カプセルホテル)
深海潜水艇の内部を連想させるモダンなゲストルームが魅力的な、今のところ台北市で唯一のカプセルホテル。地下鉄台北橋駅のそばにあって、台北中心街へのアクセスも便利で、観光客にも出張族にも大きな支持を得ている。しばしばディスカウントレートで泊まれ、その場合は600台湾ドル程度(約2,000円)と、お買い得感が大きい。