2013年に「ピロリ感染胃炎」(慢性胃炎)が保険適応となり、ピロリ菌外来を設ける医療機関も増え、ピロリ菌の検査・除菌は身近なものとなった。もっとも、「ピロリ菌に感染していると、胃がんの発症率が高くなる」ことは誰もが知っていても、それ以上のことはあまり知られていないのが実情。そこで、ピロリ菌とその除菌について、知っておくべきことを6項目に分けて紹介したい。
その1:食べ物ではピロリ菌は感染しない
ピロリ菌は、人の口から入って胃に感染することは分かっているが、どの感染経路を通じて口に入ってくるのかは、最近までよく分かっていなかった。以前は、日本人の感染者が多いことから、刺身が感染源として疑われたが、後に否定されている。今は、汚染された水を飲んで感染したという説が有力となっている。それで衛生環境の劣悪な戦前から戦後に生まれた世代の感染率が特に高いことの説明がつく。水道が整備された現代の日本では、飲み水からの感染はまず考えらず、スーパーで売られている食品を食べて感染することもないが、唾液にピロリ菌のいる親が、口移しに幼児に食べ物を与えて、感染が広まることはありうる。ちなみに、抵抗力のある大人同士がキスしても感染はしない。
その2:ピロリ菌は胃がん以外の病気にも関与する
ピロリ菌は、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の素因となることがある。特にこうした病気の再発を繰り返す場合、ピロリ菌が原因である可能性は高い。このほかにも、慢性じんましん、糖尿病、アルツハイマー病の発症にも関係しているのではないかと疑われている。
その3:ピロリ菌といっても何種類かある
一口にピロリ菌といっても何種類かいて、東アジア型と欧米型に大別される。東アジア型のほうが毒性が強く、特に日本のピロリ菌は、最も毒性が強くて胃がんを引き起こしやすいタイプ。日本が胃がん大国なのは、ピロリ菌の感染率の高さもあるが、毒性の強いタイプだからというのもある。