ぬり絵集といえば、以前は子供向けと決まっていたが、10年ほど前に「大人のぬり絵」のちょっとしたブームがあり、最近になってそのブームが再燃している。大手の書店や文具店の中には、大人のぬり絵コーナーを設けるところもあり、ベストセラーになるものも出ている。
各出版社もこのトレンドに機敏に反応し、『楳図かずおの恐怖ぬりえ』(小学館集英社プロダクション)や『ベルサイユのばら ぬり絵』(扶桑社)といった、中高年層をねらった懐かしのコミックをベースにしたもの、『歌舞伎絵巻ぬりえ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)のように和のテイストを採り入れたもの、『大人ディズニー 素敵なぬり絵レッスンブック』(MdN)のようにミッキーマウスからアナ雪までの幅広いファン層を対象にしたものまで、趣向を凝らしたぬり絵が続々と刊行されている。
そうした数ある大人のぬり絵の中でも一番人気のジャンルは、視力が向上するとか、自律神経を整えるといった、健康への効能をうたったもの。シリーズ累計でミリオンセラーとなったぬり絵もあり、楽しみながらいつの間にか健康向上に役立っている手軽さが、多くの人に受けている。
今回は、健康によい大人のぬり絵から5冊を選んで紹介したい。
●『目がよくなる魔法のぬり絵』(扶桑社)
Rサイエンスクリニック広尾の日比野佐和子院長と、同クリニックの林田康隆副院長の共著のぬり絵集。日比野院長は、目トレや脳トレの著書をこれまで何作か出しており、絵画の素養もある林田副院長は、作画も担当している。タイトルどおり、塗るだけで衰えた視力を向上させるのがウリ。
本書に収録されているぬり絵は、立体感や遠近感のある構図を多用している。また、隠し絵を探したり、数字を順に追ったりなど、絵全体をひいて見たり、視点を方々に動かして塗る必要がある。これで塗っている間に眼筋がストレッチされて、視力回復に役立つ。さらに、錯視図も数多く取り入れられているが、これは視覚を司る後頭葉を活性化させる。そして、楽しい絵を見ることで前頭葉が活性化して、目に良いホルモンが分泌される。このように、脳トレのアプローチでも視力が良くなるように考えられているため、副次的な効果として学習能力のアップや認知症の予防も期待できるという。
●『自律神経を整えるぬり絵』シリーズ(アスコム)
自律神経研究の第一人者で、順天堂大学医学部の小林弘幸教授が考案した、自律神経を整える効果のあるぬり絵集。2冊のシリーズ総計で135万部発行され(2016年10月時点)、最もヒットしたぬり絵集となっている。
小林教授によれば、現代人の多くは、ストレスや夜更かしなどで自律神経の働きが乱れており、それが原因となって免疫力の低下や倦怠感や耳鳴りといった不定愁訴が引き起こされているという。このぬり絵集で1日15分ぬり絵をすることで、自律神経の働きが正常化に向かい、健康を取り戻すという。また指先を複雑に動かすことで、脳の広い領域を刺激するため、認知症の予防にもなるということで高齢者にも人気がある。