■人は身体の不調しか認められず、心の不調を軽視しがち
最後に、自分の心が疲れているかどうか見極めるにはどうしたらいいだろか。
「心の問題は、まず身体に表れます。きちんと休息をとったのに疲れがとれなくなったとき、原因のはっきりしないだるさがあるときは『心の風邪』を疑った方がいいです。また、『やる気が起きない』『気力が出なくなる』ときも同様です。そういうときは休めるならば休んでください」。
休息を取るときのポイントとして、罪悪感を持たないようにすることだ。人は風邪をひいたとき、しっかりと休息を取るように言われる。当たり前のことだ。それと同じように心の風邪もしっかり休まなければ治らない。休息を取ることになんら罪悪感を持つ必要はない。
「しっかり休むことができれば心は復活します。しかしケアすることなくずるずる頑張り続けると、悪化して休職しなければならなくなったり、家から出ることができなくなったり、取り返しのつかない状況になります。人は身体の不調しか認められず、心の不調を軽視しがちです。自分を責めないでください。根性論に負けて無理しないでください。寝ること、リラックスすること、好きなことをすることは、すべて明日を頑張る私たちに必要な休息です」。
それでも身体の疲れが取れなかったり、心のモヤモヤが晴れずどんよりとした気分が続いたりする場合は、心理カウンセラーを頼ってほしいという。
「私たちのことを『心のマッサージ師』と思ってほしいです。心がガチガチになって辛くなる前に一度訪れてほしい。カウンセラーを頼ることは『負け』ではなく『賢い選択』と思う世の中になってほしいです。それが昨今のストレス社会を救う一助になれば幸いです」。
日本社会はストレスであふれている。自分を殺しかねないストレスの中で生きている人々もいるのに、なぜか日本人はその問題をおざなりにしがちだ。毎日に疲れを感じる読者はこれを良い機会に、ぜひ休息をとってほしい。もっと自分自身の心の健康に関心を持ってほしいと願う。
取材・文/いのうえゆきひろ