スピーカーにフルレンジ、2Way、3Wayがあるようにイヤホンにも再生する周波数によって複数のドライバーを使い分けるマルチウェイを採用したモデルがある。もともとはカスタムイヤモニターに使われるBA(バランスドアーマチュア)型ドライバーの再生周波数帯域が狭かったので、マルチWay化を余儀なくされたのが始まりである。イヤホンはスピーカーと違い耳の直近で音楽を再生するため、小口径のダイナミック型ドライバーでも充分に低域から高域まで再生できる。つまり基本はフルレンジで何の問題もない。異なる種類のドライバーを使った場合、ハイブリッド型イヤホンと呼ばれることもあり、その代表格がウーハーがダイナミック型でツイーターがBA型の2Way。低域をダイナミック型にまかせて、高域が得意なBA型と組み合わせるのだ。
しかし、オーブラボーが選択したのはAMTドライバーである。AMTはエアーモーションツイーターの略でハイルドライバーとも呼ばれる。振動板をプリーツ状に折りたたみ、その前後で空気を吸入、圧縮して放出する独自方式により、空気を正確に素早く振動できる。立ち上がり時間はダイナミック型の約1/5とハイスピードで、歪みが少なく微細な信号を再生するのが得意なのだ。ELACのスピーカーなどに採用されているがイヤホンに使ったのはオーブラボーだけである。その理由を同社代表のDavid Teng氏に尋ねると「イヤホンに使えるぐらい超小型AMTドライバーを作る技術があるのは弊社だけだからです。我々の持つ強化ポリエステルのマイラーリボンに対するノウハウを活かしてAMTドライバーを製品化しました。このイヤホンは制作にものすごく時間が掛かるのでディスカウントしたくありませんね」と笑顔で語ってくれた。