「美文字」という言葉が日常語となり、ペン字練習帳がよく売れるなど、「字をうまく書きたい」という人は増えている。反面、美文字ブームでうまい字のハードルが上がり、手書きコンプレックスを抱えている人も多いという。
「達筆を目指すのは、それはそれですばらしいことですが、日常においてそこまでの必要もないと思います」と、完璧な美文字でなくクセや個性を残して、「うまく見える字」まで上達すれば十分とアドバイスするのが、書家の清水恵さん。「うまく見える字」をマスターするには、いくつかの簡単なコツ(「文字っく」)さえ習得すればOKだという。詳細は著書の『美文字はあきらめなさい 自分らしく上達する10のコツ』(白夜書房)をお読みいただくとして、今回は本書でも述べている、すぐできるコツのうち3つを紹介したい。
■斜めの画は45度を厳守
清水さんによれば、漢字の右ハライ、左ハライを書くときは、角度に留意しているかどうかで、うまさにかなり差がつくという。
「斜めの画は45度で引くと、安定した美しい文字姿になります。点も45度を厳守します。画数が少ない字は、この45度が驚くほど大きな効果を発揮してくれます」
例えば、2つの点と左ハライのある「米」。点とハライをいずれも45度で書くと、それだけで美しくなるという。特に点は、ごく短い線を引くつもりで書くとよいとのこと。
■「トメない、ハネない、ハラワない」
勢いのよい「ハネ」は、うまく見えると思われるかもしれないが、実はほかの文字との並びのバランスを崩してしまう恐れがあるという。
「ハネは静かに紙からペンを持ち上げるようにすると美しく無駄がありません。勢いよくハネる必要はないのです」
同様に、「ハライ」も豪快さは不要。ハネのように「紙からペンを静かに少しずつ離していく」感じがベストだとする。そして、ペンを持つ角度を60度前後にすれば、ハネ・ハライの速さも多少緩和され、理想的な書きぶりになる。
トメについても、「ペンをできるだけ軽く紙に着地させる」のがコツ。ここでペンをおさえつけると、変に強調されてしまうので避けたい。